「は、半日とかからず。さ、流石さすがですね……」 ガルトゥークまでの所要日数を事前に聞いていても驚くクリスティーナ。徒歩でまともに移動すれば軽く数日はかかる距離だからだ。「今日でお二人の失踪から二日。フローラ様の体調が回復したか観察するのにもう二、三日かけたとしても、失踪から四日か五日。ルビア王国までの移動に二日かけて合計で長くとも七日。そこから魔道具で連絡を取れば、時間的な余よ裕ゆうは十分でしょうか?」「はい。十分すぎるほどです」 ここでクリスティーナの表情に初めて安あん堵どの色が浮かぶ。「ご要望に沿えて何よりです。では、今後の予定について話し合っておくべきことはこんなところでしょうか? 移動ルートについてはこちらで選定しますので」「はい。完かん璧ぺきです。またしても何から何までアマカワ卿きよう頼だよりになってしまうのが大変心苦しくはありますが……」「どの道、最終的な行き先は同じわけですし、大した手間でもありませんので。どうぞお気になさらず」 申し訳なさそうなクリスティーナの言葉を、リオは軽く流してしまう。ただ、それでクリスティーナの表情が晴れることはなく――、「……貴方には感謝しなければならないことと、謝罪しなければならないことが山のようにあります。貴方のことについて、いくつか伺ってもよろしいでしょうか?」 意を決したようにリオを見つめ、話しかけた。「お答えできることであれば」 リオの返事は淀よどみない。「まずは野外演習での出来事について、当時何が起きたのかを詳くわしくお聞かせいただきたいのですが……」「フローラ様が崖がけから落ちかけた件について、ですか?」「それもありますが、貴方がフローラを庇かばって代わりに崖から落ちてしまった後の話についてもです。フローラの前でミノタウロスを倒したという報告は聞きましたが……」 崖から落ちた後にいったい何が起きたのか、すべてを知るのはリオだけだ。「何が起きたのかをお教えするにあたってこちらからもお願いがあるのですが、今からする話については私の許可なく誰にも口外しないと、口約束で構わないので誓ちかっていただけませんか? 秘ひ匿とくしておきたい情報も話すことになるかもしれないので」 リオは最初にこれから開示する情報の秘匿を誓ってもらおうとする。「わかりました。クリスティーナ=ベルトラムの名において、貴方から聞いた話を貴方の許可なく口外しないことを誓います。貴方もいいわね、フローラ」