「プリムラ、彼らのことを頼むよ。君なら解ると思うが、彼らは金になるぞ?」「解っておりますわ」 ニコニコしている彼女は、アキラたちの力を理解しているのだろう。 金の匂いに敏感な彼女のことだ、こんな極上のコネを見逃すはずがない。「あ、プリムラ。仕立て屋に服とローブを注文していただろ?」 洞窟蜘蛛の糸で特注してもらっているのだ。「はい、あとで行って、様子を見てきましょう」「頼むよ」 俺が、プリムラと話していると、獣人たちがマイクロバスから降りてきた。「ちょうどいいところに来たな、ニャメナ」「なんだい、旦那」 「お前は、プリムラの護衛なんだから、残るんだよな?」「うっ! そうだけど……」 俺の言葉に、ニャメナがたじろぐ。多分、自分の仕事を忘れていたのだろう。 彼女は、プリムラの護衛として雇われたのだ。「にゃはは! トラ公、ケンイチのことは、ウチにまかせるにゃ」 「てめぇ! クロ助! 抜け駆けする気か?」「にゃはは!」「くそ~っ! こんなやつを信じた俺が馬鹿だったぜ」 その会話に、プリムラがため息をついた。「解りました。私の護衛は別の人を雇うことにしますよ」「す、すまねぇ、お嬢!」 ニャメナが頭の上で両手を合わせた――この世界もそういう謝り方をするんだな。「いいんですよ、あまりに信じられないようなできごとが色々とありすぎて、全部有耶無耶になっていましたから」 プリムラが、呆れた表情で俺のほうを見る。「給料も払ってなかったしな」「え~? 色々と稼がしてもらってるし、住む所ももらって、美味い飯は食い放題だし、美味い酒は飲めるし、金なんてまったく要らねぇ。逆に俺が身体で払いてぇぐらいだ」「そうだにゃー、ウチの金も全然減ってないにゃー。ウチもいつでも身体で払うにゃー」 ミャレーが俺に抱きつき、尻尾を腕に絡めてきた。「おい、クロ助! 俺も行くことになったんだから、旦那から離れろ」 ニャメナはミャレーを引き離そうと、手を伸ばしてきたのだが――。 それを素早い動作でミャレーが躱かわすので、二人が俺の周りをグルグルと回り始めた。