「それゆえに、アズール殿には、リョウ様の旅路について、紙で記録をとっていただきたいのでございます」「リョウ殿の……」 私はそうつぶやいて呆然と冊子を見つめた。 おそらく、タゴサク殿にとって、リョウ殿がウヨーリ様なのだ。 まるで、崇拝するようにリョウ殿を見つめる使用人の視線はこういう意味だったのだ。彼らにとって、リョウ殿は間違いなく神様のような存在だったのだ。 突拍子もない話だと、思う。リョウ殿は、神の使いなどではなく、王都にある学園に通う少女だ。 時に、コウキ殿に甘え、友人たちと戯れ、カイン殿を見てかっこいいと言って、久しぶりに会った兄と口喧嘩したり……そういう普通の少女のような一面をもっている。