「……その、セカンド卿。ひょっとして頭がお狂いになっていらっしゃる?」「失礼だなお前!?」 全てが終わり。スチーム・ビターバレー辺境伯が、開口一番に何を言うかと思えば、半笑いの罵倒だった。でも嫌いじゃない。「冗談です。私は貴君を侮っておりましたが……今となっては恥ずかしい」「そうだな。だったらもっと恥ずかしがれと言いたいが」「いや、あのね、言わせてもらいますけど。侮って当然だと思うんですよ。何ですかあの態度は。遊びに来てるんじゃないんですよ……と。そう思っていました。ですが、貴君にとっては当然の態度だった。だって本当に遊びに来てるんですもの」「そう褒めるなよ。照れるじゃん」「褒めていません。いや、褒めていますが、褒めていません」「何だそりゃお前……」「捕虜はこれ以上ないほど丁重な扱いで戻ってきました。総勢一万四千超えのカメル神国軍は撤退しました。一生忘れられないトラウマを植え付けられてね。そして、こちらは全くの無傷です。この意味がお解りですか?」「大成功だったな」 俺がニッと笑うと、スチームも笑う。「ありがとう。何度でも言います。ありがとう。ありがとう。ありがとう……!」