セフィロスはその夜、ソルジャーフロアのマテリアルームに立ち寄った。遠出のミッションで見つけた魔晄石をマテリアに生成するため、馴染みである研究員のもとを訪れたのである。
「また、珍しいものを持ってきたね」
喜びに顔を綻ばせる彼は、科学者というよりも過度なマテリア愛好者と言えるだろう。深夜の突然の訪問にも関わらず、彼はセフィロスを歓迎してくれた。
星を駆け回るソルジャーたちは、貴重な魔晄石を収集してきてくれる、言わばお得意様だ。セフィロスはその中でも特に稀少な魔晄石をどこからともなく見つけてきては、しばしば彼らを喜ばせた。
圧縮機にかけられた魔晄石は、精錬されたマテリアへと姿を変える。美しい球体を取り出しながら、彼はパネルに表示される数値を見て、感嘆の声を漏らした。
「これは………」
「なんだ?」
胸で組んでいた腕をほどき、セフィロスはそれに近づいていった。
「非常に珍しいマテリアだ。僕も目にするのは初めてだよ」
「効果は?」
興奮を見せる研究員に、セフィロスは問う。彼は珍しいマテリアを目の当たりにした歓びに口隅を緩め、嬉々として説明した。
「ステータスアップ系のマテリアだね。魔法を呼び出すことはできないみたいだ。一見なんの変哲もなく見えるけれど、とんでもない効果が隠されている」
「能書きはいい。端的に説明しろ」
マテリアのことを彼に語らせると、小一時間を平気で過ぎてしまうことをセフィロスは重々承知している。ため息混じりに促すと、彼は渋々と言った様子で話し出す。
「名前は……『かいらく』のマテリアとでもしておこうか。要するに、装備した者を性的に敏感な状態にする効果がある」
「……………『かいふく』じゃないのか」
「『かいらく』、だよ」
「……………」
冗談だろう、と、不審そうに糾弾の視線を送る英雄に、彼は口唇を尖らせる。
「…そんな目で見ないでくれないか。僕はいつだって真面目だよ」
「真面目な男の発言とは思えんな」
俄には信じがたく、訝しげに彼を睨むと、生成したばかりの薄桃色に光るマテリアを握りしめたまま、彼は画面へと向き直る。彼の開いたモニタを見下ろし、セフィロスは片眉をピクリと動かした。
「古い文献にあっただけだから、実在するとは思わなかった。データを基にした複製は無理のようだね、サンプルになるマテリアの情報が足りなすぎる」
「……と、いうことは…」
「増やすには、マテリアを成長させるしかないってことさ」
深くため息を溢し、彼は首を竦める。その隣で、先程まではそれほど興味も惹かれていなかったセフィロスが、食い入るように画面を見つめていた。
「マテリアを成長させるには、これを装備して経験を積むことが一番だけど…、こっちは科学部門のように予算があるわけじゃないからね。サンプルもいないし」
「心当たりがある