だから、全てこいつが悪いのだと思った。こいつさえいなければ、自分だけが特別になれたのに…。特別になれば、きっともう凍える心配はないのに……。善逸が来てから先生の情は二つに分けられた。寺にいた頃と一緒。でも、今にして思えばあの子供達とこいつは少しだけ違ったのかもしれない。掠め取ろうとはしなかった。ただ、与えられたものを育てていた。そのことに唐突に思い当たった。そして今、その育て上げたものを携えてこいつは俺を切った。“肩を並べて”その言葉と共に。今際(いまわ)の際(きわ)になって、ようやく気付いた。穴を埋めるための道具はすでに揃っていたのだと。“人に与えない者はいずれ人から何も貰えなくなる”いつだって自分のためだけに生きてきた。自分だけが全てだった。“欲しがるばかりの奴は結局何も持ってないのと同じ”特別が欲しかった。自分だけの特別。それは与えられるものであり、与えるものではなかった。そう信じてきた。“自分では何も生み出せないから”けれども………。“独りで死ぬのは惨めだな”あぁ、本当に惨めだ。独りでは穴は埋められない。誰かが隣にいなければ特別になんてなれない。一方通行のものは決して特別にはなりえないのだから……。隙間風吹きすさぶ寒々しい空っぽの部屋と共に、自分の意識は闇へと消えていった。