「心配いらない、アリスを信じてほしい。それに西条の子を連れ戻したりしなければ、KAIが西条の子に付く様にアリスがしてあげる」「どうしてそこまで……? もしかして、アリアさんが雲母を追いつめたからですか?」 アリス様は西条社長の質問に、再び首を横に振られました。「そうじゃない。アリスはアリスの守りたい物の為に動いているだけ。西条の子にKAIがつくことにより、日本三大財閥の均衡はなんとか保てる。そうなれば、紫之宮財閥と一騎打ちにならずに牽制する事ができる。とはいっても、さっきも言ったけどクロは良い奴だから、何か仕掛けてくるわけじゃない。でも何処かの会社が伸びるという事は、反対にどこかの会社が業績が悪化していく。だから、今のうちから手を打たないといけない。……まぁ、KAIの成長が絶対条件だけど……」「私共はこのまま静観していれば良いんですね?」 西条社長の言葉にアリス様は頷かれました。「話はそれだけ。じゃあ、バイバイ」 そう言ってアリス様は手を振り、私に目で『帰るよ』と、合図をされました。 この御方は本当に不思議な方です。 敵対組織である、相手のトップと対面してもいつもの姿勢は崩さず、そして誰よりも先の事を見ています。 そんなアリス様の言葉には不思議な重みがあり、その言葉を向けられた相手は納得してしまうんですよね。「――神崎さんの事、本当に良かったんですか?」 部屋を出てすぐ、私はそうアリス様に尋ねました。「……仕方ない……。皆が幸せになるには……これがベスト……」 今のアリス様は、もういつもの怠気な様子に戻っておられました。 私はアリス様の言葉に涙が出そうになります。「他の方の幸せのためにアリス様は我慢をして、神崎さんを西条さんにあげるとは――アリス様はやはり偉大ですね!」 感極まった私は、そうアリス様に言いました。 するとアリス様は首を傾げ、私の事を見てこられました。「何を……言ってるの……? 別にカイを……西条の子にくれてあげるなんて……一言も言ってないけど……?」「え……?」 私はアリス様の言葉に、先程のやり取りを思い返します。 ――確かに『くれてあげる』とはおっしゃってませんが、それは神崎さんがアリス様自身の物ではなかったからではないのですか……? 私がアリス様に言った言葉も、アリス様の物としての『あげる』ではなく、譲って『あげる』という意味で言ったわけですし……。「カイは……貸し続けてあげるだけ……。カイはアリスのだから……くれてあげたりは……しない……」 アリス様はそうおっしゃられ、ニコッと微笑まれました。