暫く下りると、そこそこ広い空洞に出た。 灯篭に、鳥居。階段と、小さな社に、観音開きの戸。 どうやらここは祠のようだ。「…………」 戸の奥、岩の台座の上。 そこに一振りの刀が置いてあった。 恐る恐る手に取る。 装備の耐久は、限界まで削れていた。壊れる一歩手前だ。これを使うには、相当な修理が必要である。しかし……「凄いな。見たこともない刀だ」 俺の長い長いメヴィオン歴の中でも、一度たりとも目にしたことのない装備。ボロボロであろうとも、思わず目を奪われるほど美しい刀だった。 そう、恐らくは。「……オリジナルか」 オカンさん作製の“オリジナル武器”。 【鍛冶】スキルの全てが九段の上、途方もない経験値と素材と時間を注ぎ込んで数%の確率でしか作製することのできない、上級者の憧れ。 そんな物が、何故、こんな所に。 俺はひとまずインベントリに仕舞い、それから刀の情報を見た。 刀の名称は、「七世零環」となっている。 そして、アイテムの説明文には――『敬愛なるsevenへ、また共に戦えることを願って。0k4NNより』 …………。 つい、目頭が熱くなった。 俺は七世零環をインベントリへと大切に大切に仕舞い、暫しその場に立ち尽くす。 彼の最期の言葉を思い出した。 どれだけ後悔するかじゃない、どれだけ胸を張って死ねるかだ。 俺にとっては、もっともっと未来の話だと、そう言っていたが。 馬鹿言え。こんなものを貰っては、もう毎日そう思わずにはいられないじゃないか。「……また、共に戦おう」 失った日々を取り戻すように。 俺たちの青春を再現するように。 今、確かに、あの頃の熱く眩しく鮮烈な輝かしい栄光の情景が、この胸に蘇った。 願わくば、この世界でも、もう一度。 世界に飛び出し、また共に戦おうじゃないか――。