「興味があるなら、色々と出してみるが。友好の印に贈り物をするのは、普通にあることだからね」「でも――、只人に借りを作るのは……ねぇ」 エルフたちが全員で顔を見合わせる。そんなに警戒するってのは、過去になにかあったのかもしれない。 その中から、1人の男が前に出てきた。「だからな~、こんなBBA共の身体で済むなら、本当に安上がりなんだよ」「うるせぇ! この男ども! 向こう行ってろ!」「そうだよ! 決まるものも決まらなくなるだろ!」「なんだよ~、実際にBBAなのは事実だろうが」 そりゃ、皆云百歳なんだろうから、BBAなのは間違いないだろう。「ちなみに、100歳以下っているのか?」 俺の問に、女たちは即答した。「いまのところいないね。子供はしばらく生まれてないし」 おかっぱのエルフが、彼らの部族のあらましを教えてくれた。「エルフは100歳を過ぎると、他の集落へ行くの」「血が濃くならないようにか?」「そう、解ってるじゃない」「――ということは、ここに親子はいないってことか」「うふふ、そゆこと~」 数百年単位でゆっくりと、増減を繰り返すのか。なんとも、気の長い話しだな。 まぁ、その話はおいて、朝飯にしよう――腹が減ったからな。 アネモネの魔法で、パンが焼けるいい匂いがしてくる。「それって、パン?」 黒いドーナツ型のパン焼き機にもエルフたちは、興味津々。 デカいエルフたちに囲まれて、彼女もやりにくそう。「ほら、パンを食いたいなら、俺のパンをやるぞ?」 俺は、シャングリ・ラからパンを買うと、エルフたちの前に差し出した。 いつも買ってる訳ありパンってやつだ。多少いびつでも崩れてても、この世界のパンより遥かに上等で甘い。「う……う」 食べたそうであるのだが、どうしても手を出さない。「そんなに頑なに拒否することもないと思うけど。なにも入っていないぞ?」 俺は、ビニール袋を開けると、パンを一つ摘み、一口齧った。「ほら?」「旦那、俺にもくれ」「ウチもにゃー!」「ああ! もう! すぐに焼き上がるのに!」「大丈夫だよアネ嬢。一つぐらい食べたって平気平気」「にゃー!」 気前よく、ものをプレゼントしようとしている俺たちに、なにか裏があると思っているのだろうか?「ちょっとお母さん、このエルフたちに説明してやってくれ。単なる好意で、なにもやましいことなんてないとな」 俺はベルに、エルフとの仲介を頼んだ。「にゃー」 ベルが、ちょっと離れた場所に歩いていくと、その周りをエルフたちが囲み円になっている。 エルフの戦士たちも説得してくれたので、なんとかしてくれるだろう。