「ケンイチ、今日はここで泊まるにゃ?」「そのつもりだ。このままもうちょっと先まで測量したら、ここまで戻ってきて部屋を出す」「解った!」 別にここで待っててもいいんだが、ついてくるって言うだろうし。 まぁ、なにが出るか解らんしな。 昼飯を食い終わったので、再び測量に出かける。 空はいい天気で、湖面は鏡のように滑らか。 それから2時間程、先まで測量して1時間かけて戻ってくると、小さい砂浜が俺たちを迎えてくれた。 時間は午後3時頃。 ゴムボートを砂浜に近づける。「さて、部屋を出すか――」 アイテムBOXからコンテナハウスを出すと、砂浜が斜面になっているために、斜めになる。 これは、前に確認したとおりだ。ここは狭すぎて、ユ○ボも出せない。「ケンイチ! お部屋をしまって、ゴーレムのコアを出して!」「おっ! なにか思いついたのか?」 俺の言葉に、アネモネがフンス! と気合を入れている。 彼女の言うとおりに、コンテナハウスを一旦アイテムBOXに収納して、ゴーレムのコアを出してやった。「む~!」 彼女の集中とともに青い光が湧き出て、砂浜の砂がコアに集まり再び離れる。 それを何回か繰り返したあと、砂浜が均されて平らになった。「おおっ! ゴーレムにこういう使い方があったとは……凄いぞ! アネモネ」 彼女の頭をなでてやる。「えへ――多分、もっと違う使い方もできるよ。試していい?」「ああ、もちろん。なにをするんだい?」 彼女の指示でゴーレムのコアを水に浮かべた。「む~!」 彼女の魔法が発動。 コアが動いて俺たちのゴムボートの下へ潜り込むと、皆を乗せたまま水面を動き始めた。 これはゴムボートが動いているのではなくて、水そのものが動いているのだ。 それに、かなりのスピードが出ている。これなら俺が買った船外機より速い。 素晴らしい水上航行能力だとはいえ、彼女の魔法が頼りだ。 連続で1時間~2時間使えるかどうかだが、緊急時には、皆のボートをまとめて運ぶことも可能だろう。 アネモネの魔法によって、湖面をぐるりと回って、俺たちは元の場所へ戻ってきた。「凄いぞ! アネモネ、こんな方法を思いつくなんて!」「なんにゃ! それって、アネモネの魔法で動いたのきゃ?」「そうだよ」「いやぁ、アネ嬢もドンドン凄い魔導師になっちまうねぇ。これじゃ王都の大魔導師様でもかなわないんじゃね?」「確かにのぅ……こんなゴーレムの使い方など聞いたこともないわぇ」「アネモネは、こんな方法を自分で気づいたのかい?」 俺の言葉に彼女が首を振った。「ううん、お城でアキラさんが、ゴーレム魔法の応用で、油を撒いたって言ってたでしょ?」「ああ、確かにな。油を動かせるなら、水だって動かせるはずだ」 ゴーレムで水を動かして、それにゴムボートも乗せて動かしたわけだ。 理論上は、もっと大きな船でも動かせるだろう。