ところで……サラって誰だっけ。「メティオダンジョンへ糸操術の習得に向かった際に同行していたメイドです」 困り顔でユカリに視線を向けると、間髪を容れずに教えてくれた。「イヴと、ルナと、あぁー、あの」 内偵のプロとかいうメイドか。 なるほど、あの娘も一度あんこの転移召喚を受けているから、確かに目印にできるな。「じゃ、鯵釣ってくる」「あじってくるー」 準備万端、俺はエコと二人で皆に宣言して、あんこを召喚した。 いつもはエコ贔屓だなんだとうるさいシルビアとユカリも、今日ばかりは清らかに見送ってくれている。「センパイ気ぃ付けてやー」 ラズも聖女スマイルでひらひらと手を振ってくれた。彼女の言わんとすることはわかる。夜釣りのうえに雨だから、エコがまたスベって海に落ちないよう気を付けろと、そういうことだろう。「誰がスベり芸人だッッ」「なんや急に!? ナーバスすぎるやろ!」 いかん、発作が。 しかし流石だラズ。そうか、ナーバス……なるほどそういうツッコミもあるのか。勉強になるな。「あんこ頼んだ。とりあえず俺だけ、サラの所に」 エコはひとまず家に置いていく。話が付いて準備が整ったら、釣場に直接召喚する予定だ。「御意に、主様」 さあ、いざ交渉へ。