「随分と上手くやってたらしいけど、この前の愛闘祭でついにバレたみたい」 カップルの祭りだから、デートがブッキングしまくったのだろうか。 あるいは、女性陣が「あの人とデートに行くの♪」、「え? 彼は私の彼氏なんだけど」、「違うわよ! アタシのカレよ!」みたいに芋蔓式にバレたのかもしれない。 ……むしろよく愛闘祭までバレなかったものだ。「そいつは逃げるようにうちを辞めたんだけど、そこから亀裂が広がって……とうとう本日、うちのクランは解散よ」「それはまた、何と言うか……」 強豪クランの最後がそれだと思うと、何だか悲しくなる。 結局は人間の集まりだから、その関係が崩れるとどうしようもないのかもしれないけれど。「それでさ……この件であたしが一番腹を立てていることがなんだか分かる?」「いや、全く……」 俺が首を振ると、チェルシーは一層恐ろしい顔になってこう言った。「――その恋愛絡みのゴタゴタにあたし自身が欠片も噛んでなかったことだよ」 彼女の言葉には悲哀とも怒りとも区別がつかない感情が篭っていた。 正直、何と言えばいいのか分からない。 チェルシーの隣のジュリエットもどこかおろおろとした様子だ。『……二十人と付き合うようなナンパ男に、アプローチすらされなかったのだな』 お前それ絶対に口に出すなよ? 最悪、この食堂ごと液状黄金ポセイドンで粉砕されるぞ。 多分、二十股男もチェルシーの強さにビビッて粉かけなかったんだろうし。「……恋愛なんてクソだ……」「チェルシーは……かわいい、よ?」 再び負のオーラを発しながら俯いたチェルシーの頭を、ジュリエットが優しく撫でていた。 ……とりあえず、ここはジュリエットに任せるしかない気がした。 しかし、これは本当に参った。 頼りの<黄金海賊団>がなくなってしまった今、クランの問題はどうすればいいのか……。『……あやつの<月世の会>に入るしかないのでは?』 …………なんてこった。