物心ついた頃から、心のどこかがずっと冷えていた。まるで、部屋の壁に空いた穴から絶えず隙間風が忍び込んでくるように。寒くて寒くて、凍えてしまいそうで……このままだと死んでしまうかもしれない。けれども、その穴はどうすればふさがるのか。その時の自分には分からなかった。いつだったか、町を歩いていると転んで泣いている子供を見かけた。なんとなく眺めていると、親らしき男女が小走りで子供に近づいてきた。二人は笑いながら子供を立ち上がらせ、手を繋ぎながら夕日の先へと消えていった。その光景を見たとき自分の中に沸き上がったのは、どうしようもない怒りだ。あの子供は死にそうな寒さなど感じたことはないのだろう。穴をふさぐための方法は“特別”になることだ。そう分かった。しかし、誰もそれを自分に与えようとはしなかった。こんなにも震えているというのに、誰も自分の部屋にぬくもりを落とさない。そのことが許せなかった。誰も与えないというのなら、自分で奪い取るしかない。そう思った。