「ほらアネモネ、これが石だ」 俺は最初に掘り出した拳大のオレンジ色の石を彼女に見せた。「あ~綺麗!」「これで、どのぐらいの価値があるのですか?」 商人のプリムラは値段が気になるようだな。「解らない――街へ行って、道具屋の婆さんにでも聞いてみるか」 シャングリ・ラの査定は20万円だったが、この世界での値段はいくらなのか? 例えば、金貨数枚とかなら、街で換金した方が効率が良いという事になるな。「ミャレーとニャメナは? どこへ行ったんだ?」「わかんない」「まぁ、彼奴等は夜目が利くんだ。暗くなったら戻ってくるだろう。それまでに飯の用意をするか」「うん!」 皆で足場を降りて、家に帰ってきた。 外でスープを作り、テーブルの上に、いつものパンを出す。 メインディッシュは、ブランデーに付けた熊肉のステーキだ。 鉄板で焼きながら、豪快に火を付けてアルコールを飛ばす。「わぁ!」 立ち上る炎にアネモネがたじろぐ。いやいや、君の魔法の方が凄いから。 ただ魔法を使っている時は一種のトランス状態なので、あまり感情の変化がないらしい。 それ故、自分の炎に驚く事もないと言う。 肉を焼く匂いに誘われてきたのか、暗闇の中からベルがやって来た。 ――と、言う事は、あいつ等も帰ってくる頃だろう。「にゃー!」「おお~い!」 ほら、帰ってきた。「遅かったな、どこまで行ってたんだよ」「かなり奥まで行ってきたよ。旦那の言うとおり、このデカい棚はどこにも繋がってないね。魔物もまるっきりいない」「にゃー! でも、鳥はいたにゃ」「そりゃ、鳥は空を飛べるからなぁ。崖は関係ないだろう」 2人共、鳥を3羽ずつ仕留めたようだ。青や白や色とりどりの鳥を手に持っている。「ケンイチ、街へ売りに行くまでアイテムBOXに入れてにゃ」「場所があったら、俺のも入れてくれ」「ああ、いいけど、でもメシ代として1羽徴収するぞ」「それぐらい構わないよ。街じゃ普通の金を払っても食えないような飯ばっかりだし」「ケンイチ! これも見つけたにゃ」 ミャレーが差し出したのは、少々緑掛かった小さな卵。ウズラの卵より少し大きい。「卵?」「これにゃ、コッカ鳥っていう、高級食材になるにゃ」「1個どのぐらいするんだ?」「多分、銅貨2枚(2000円)以上しますわ」 この卵の事は、プリムラも知っていたようだ。 そりゃ高いな。こんな小さな卵が1個2000円か――ちなみに、この世界では卵1個200円ぐらいな。 コッカ鳥の親鳥も、かなり美味いらしい。ミャレーがしばらく巣に張り付いて待っていたらしいのだが、気取られたようで親鳥は帰ってこなかったようだ。