ダンジョンや野宿での食事も、また冒険の醍醐味である。人によってはお楽しみの時間だし、苦痛の時間でもあるだろう。 大抵の駆け出し冒険者にとっては、楽しいだけの時間ではないだろう。獲物が取れなければ、干し肉を齧るだけで済ませることも多いはずだ。 上の階層で入手したウサギ肉をケイトリー本人に焼かせ、それを食べさせる。塩もなく、捌き方も下手であったために、パサパサで美味しくはないはずだ。 それでもケイトリーは喜んでいた。意外と逞しかったらしい。まあ、自分で狩った獲物を自分で焼いて食べるという行為が新鮮だったのだろう。 そうして初心者ダンジョンをケイトリーに満喫してもらった俺たちは、ダンジョンを後にしてオーレル邸に戻ってきたのであった。「よお、戻ってきたか!」「お爺様! もうお仕事はいいのですか?」「おう」 出迎えてくれたのは、オーレル自身だ。 何だかんだ言って、孫娘のことが心配だったのだろう。ヤクザの親分似の顔に微笑を浮かべて、駆け寄ってきたケイトリーの頭を撫でている。「どうだった? 大怪我はしなかったか?」「はい」 怪我をしなかったかとは聞かない。オーレルだって初心者ダンジョンの造りは知っているのだ。罠などに引っかかれば掠り傷程度は免れないことも知っている。 それよりも、戦闘で酷い目に合わなかったかどうかの方が気になるのだろう。「レッサーオーガを3匹やった。戦闘では怪我してない」「ほう? 初戦闘でもか?」「ん……。そのことで少し話がある」「何か厄介事が起きたっぽいな」「ケイトリーはよく頑張った。それは保証する。ただ、変な奴らに会った」「変な奴ら?」 さすがにケイトリーの居る前で、シビュラたちの正体がレイドスのスパイかもしれないとは言えない。 フランが軽くケイトリーを見たことで、察してくれたのだろう。オーレルがケイトリーの相手をメイドに任せて、場所を変えてくれた。「それで、何があった?」「レイドス王国の人間かもしれない奴らにあった」「あにぃ? レイドス?」「ん。多分」「明確な証拠はないんだな?」「ない。でも、凄く変な奴らだった」