「そ、それは、私は、願っても無いことですけれど、しかしカテリーナ様は、いずれグエンナーシスを背負うお立場の魔法使い様でいらっしゃいます。それを我が商会に雇い入れるというのは、如何なものかと。一時期だとしても商会所属の魔法使いであったと領民が知れば、あまりいい気持ちではないかと思います」 そう、魔法使いの中でも、商会所属の魔法使いというのは、あまり良い職ではないと言われることが多い。 商会所属の魔法使いというのは、基本的に領地にあまり必要とされずに王都に返された魔法使いや、あとはまあ、物好きとか、そういう人しかいない。 つまりアランやカテリーナのように将来重要な立場が約束されている人にとって、商会所属の魔法使いという経歴はどちらかと言えば汚点になる。 カテリーナは大切な友人だ。 確かに、商会に所属してもらえれば嬉しいけれど、彼女の将来の汚点になるようなことはさせたくない。 ていうか、グエンナーシス卿だってそのことはわかるはずだよね!? 私が、信じられない気持ちでグエンナーシス卿を見るけれど、彼は眉ひとつ動かさずに頷いた。「案ずるな。カテリーナにグエンナーシスの伯爵位を継がせる予定はない」 ええ!?「お、お父様どういう意味でいらっしゃるの!?」 爵位を継がせるつもりはないって、どういう!? いやだって、確か、カテリーナ嬢以外に魔法使いの子供いないですよね!? 養子!? 養子でもとる気!? ああ、もしかしてこの前勝手に夜中抜け出したカテリーナ嬢への罰!? 勘当ってこと!? 罰重くない!? ねえ、罰重くない!? あ、もしや、カテリーナがやろうとしていた本当の意味に気づいてそれで!? 私が、驚きで固まっていると、グエンナーシス卿はそのまま話しを続けた。「正確にいえば、継がせられないというのが正しいだろうか。私は、これから王に拝謁し、王から賜った爵位と領地をお返しするつもりだ」 ……え?