僕の転移は実は瞬間移動ではない。間に障害物があれば弾かれてしまうことから、高速移動といったほうが良いだろう。 音速以下の攻撃を防いでしまうというのなら、これであればどうかな。 右下から左上へ、手首から刃先までを転移させる。 軌道上にあった障壁にはわずかな傷がつき、同じようクロス状に斬りつける。ほんの少しだけバツ型を障壁へと刻み、そして最後に中心へと白金色の輝きを生む星くずの刃を押し付けた。 回避不可の密閉空間。 それを作れたのは君のおかげだよ、ザリーシュ。 がはあと吐き出した息は火を吹きそうなほど熱い。無茶な転移により肩は今にも外れそうだ。とっくに人体の限界を超えていたのだが、それでも締めの言葉は礼儀として必要だろう。「ええと、これが僕の怒りだ、と言うのが正しいんだったかな」「やめっ―――……!」 ずどう!と砂漠の一角で、隕石が衝突したのではと思うほどの地響きは起きた。