「私もー! ケンイチと一緒に冒険するぅ!!」「にゃー」 いつの間にか、足元にベルもやってきて、黒い毛皮をスリスリしている。「よしよし、お母さんもな」「なるほどなぁ――それで辺境伯なぁ……」 アキラとひそひそ話をする。「そうなんだよ。勿論、王妃を引き取るのも辺境伯の条件に入ってるんだけどな」「ははぁ――ケンイチも大変だな。俺なら、その条件でも断るが」「まぁ、乗りかかった船だし、聖騎士とやらにもなってしまったしな」 その後、王族に売るための商品を取りに来たプリムラにも事情を話す。「……はぁ。予想はしておりましたけど」 プリムラが大きなため息をついた。思いっきり呆れた顔をしている。「ごめんよ、プリムラ。後でお義父さんにも説明をするからさ」「いいえ、父は喜ぶと思いますよ。貴族の身内になれる機会なんて、普通は訪れないのですから。まして辺境伯ですか?」「そうなんだよ」「親子ともども、身に余る光栄ですわ、ハマダ伯様」「そういう嫌味は止めてくれよ、プリムラ」 彼女を抱き寄せて、ナデナデする。「……こうなると思っていましたから。あなたを独り占めしたくても――私の想像のはるか彼方に行ってしまうのですね、はぁ……」「悪いと思っているよ」「いいえ全部、私の身から出た錆です。いやらしい根性を出して、ちょっと商売を大きくしようと、子爵様にケンイチの存在を教えてしまったばかりに……はぁ……」 また、ため息をついたプリムラに商品を渡すと、それをアキラが見ていた。「なるほど、真珠か~」「そう、この世界じゃ簡単には手に入らないからな」「まぁな、養殖技術なんて存在してないだろうし」 大きな真珠も養殖なら簡単に作れる。中に入れる核の樹脂を大きくすれば良いのだ。 大きい方がいいだろうと、そういうものを売って中身を見られたら、詐欺だと言われるかも知れない。 それに真珠の層が薄いと、あの独特の美しさが現れない。美しさを出すためには真珠層の厚さが決め手になるのだ。「真珠の値付けは君に任せるよ。高くても王侯貴族が払える金額じゃないとな」「王族の方々は、真珠を使って貴族たちの求心力を増す切り札として使いたいようです」 アキラが俺から借りた真珠を上に掲げている。「王族の仲間になれば、お宝の真珠が手に入りますよ~ってわけか」「アキラなら、お友達価格で売ってもいいぞ? どうだレイランさんに」「確かに喜ぶだろうけど……この前、プラチナを買ってやったばっかりだし……」「あのケンイチ――プラチナというのは?」「これだよ。ここでいう、白金だ」 俺は、シャングリ・ラから1/10オンスのプラチナのコインを買った――5万円だ。「まぁ! こ、これが伝説に聞く、白金ですか?」 さすが敏腕親子商人らしくプラチナのことも知っているようだ。「そうらしい、魔力を注ぐと光るらしいが、俺でもできるのかな?」 アキラによれば、祝福の力にもアルミが触媒として使えるということだし、魔力と似たような感じじゃないのか? ちょっとコインに、ナチュラル回復ヒールを流してみると――コインが薄っすらと光だした。