世界一位の定跡、“セブンシステム”――篤と御覧じろ。「!!」 初手、俺は《歩兵剣術》と《桂馬剣術》の複合をカサカリの右足手前に突き刺すようにして放った。 二手目、カサカリは足を一歩引く。当然の対応。直後、バランスを取るため中空へと無防備に放り出されたカサカリの左手を《歩兵剣術》で斬り上げて狙う。三手目だ。「っな!?」 ギリギリ躱したようだ。カサカリは慌てて距離を取る。この四手目、デカすぎる隙だ。五手目、俺は間合いを詰めながら《飛車剣術》を準備し、懐へ突き入れるように突進した。「させぬ!」 レイピアで防ごうと《金将剣術》を準備し始めるカサカリ。最悪の六手目だ。 ああ残念。その場合は、これで決着がついてしまう。「そぉんな馬鹿な――!?」 スキルキャンセル、直後《角行剣術》を準備し、俺はミスリルソードを投げた。「ぐあっ」 金将間に合わず、回避不可能。ずぶり、とカサカリの無防備な首筋をミスリルソードが貫通する。 七手。これでほぼ“寄り”だった。 鮮血を散らしながら倒れるカサカリ。俺はトドメとばかりにインベントリからもう一本のミスリルソードを取り出しつつ《龍馬剣術》を準備していたが……カサカリが起き上がることはなかった。どうやら急所への一撃でHPを全て吹き飛ばしてしまったらしい。決闘の設定通りに、カサカリはHPを1だけ残しスタンした。「…………し、勝者、セカンド・ファーステスト!!」 しばしの沈黙の後、審判が大きな声で宣言する。 直後――地を割るような歓声と拍手が闘技場に鳴り響いた。 ものすごい熱気だ。メヴィオン以上かもしれない。 特に使用人たちのいる一角がヤバイことになっている。俺は良い気分になって、そっちに向かって手を振ってみた。やつらはより一層の盛り上がりを見せる。いいねぇ嬉しいねぇ。「何だありゃ!」「あのカサカリを完封かよ!」「圧勝だ!」「一瞬だった!」「すげぇもん見た!」 よく耳をそばだてると、観客席から色々な感想が聞こえてくる。ほとんどが俺を褒めてくれていた。 だが「あのカサカリを」……この言い方、少々引っかかる。さっきのオッサンがまるで強者だったかのような表現。 馬鹿を言うな。踊りで間合いを誤魔化そうなんていう小手先の工夫をするやつが、強者なわけがない。あれは「メヴィオン始めて二年の中学生が目立つためにオリジナリティ出そうとして調子乗っちゃった図」だ。 確かに良い反応はしていたが、やはり基本ができていない。常連の観客か何か知らないが、気取った野郎が分かった風なこと言いやがって。ちょいとむかっ腹が立つ。あれを強者と思ってほしくない。タイトル戦をこんなものだと思ってほしくない。まだまだだ、まだまだ。「いやはや、お見事なものでした。素晴らしい剣筋ですねぇ」 出場者用観戦席へ向かう途中、知らないオッサンにいきなり話しかけられた。何処にでもいそうな普通のオッサンだったが、目だけが異常にギラギラしている。もしかしたらカラ中(カラメリア中毒者)かもしれないと思った俺は、気味が悪いので完全に無視をした。