「おぬしらが仲が良いのはよーく分かっておる。これでも進展するよう応援をしておったからな。本当じゃぞ? しかしまあ、こんな真昼間、わしらの目の前でキッスとはのう」「も、もうっ! 別に良いじゃない、気がついたら……してたの!」 真っ赤な顔をし、マリーは後部座席を振り返る。が、突き出されたスマホに僕らの決定的瞬間が写っていたら、口をパクパクするしかないよねぇ。 返してと手を伸ばすけれど、大人と子供、竜とエルフなのだから奪えるはずもない。「ふむ、許してやらぬことも無い。ただひとつ、条件はあるがのう」 別に許してもらう必要も無いのだけれど。 しかしその言葉は僕から、そしてエルフさんからも出てこない。たぶんこれからも口付けをし、迷惑をかけてしまうからだ。その証拠に、そーっと互いに目配せをすると「まずは条件を聞き出しましょう」「分かった」とわずかに頷きあう。 意思疎通もいらないんじゃないのかな、これ。「……それで、魔導竜の出す条件というのは何かな?」「うむ、実に簡単なことである。今でこそ仲の良いおぬしらではあるが、どのような出会いをしたのじゃ。人間とエルフの馴れ初めとやらを、ホテルへ辿り着くまで楽しもう」 あれ、そういえば教えていなかったか。 ぱちりとマリーと瞬きをしあい、先ほどの会話には戻りたくないので僕は口を開く。「最初は凄かったよ、出会った直後に殺されたんだし」「あっ、あなたね、自分のしたことを覚えていないのかしら! あれはどう考えても過剰防衛なんかじゃないわ! だいたい死ぬどころか、あなたにとっては夢だったのでしょう? だからノーカンなの!」 違うの違うの、とマリーはかぶりを振る。 しかし、それを聞いた者たちは興味をさらに深めてしまうだろう。 なぜ大人しいマリアーベルは僕を殺したのか。 それは推理小説を紐解いた瞬間に似ているかもしれない。なぜ、なぜ、という疑問は膨らんで、飲食さえも忘れてページをめくってしまう。 好奇心は猫を殺すというけれど、今回に限っては黒猫と幽霊という組み合わせ。そして昔の僕でさえ、好奇心によりマリアーベルから殺された。 次第に後部座席の2人は前のめりとなり、過去の物語を知ろうとする。まるで映画の始まりを迎えたような姿勢だ。 当の少女からは「別に構わないわ、話しても」という視線をいただいたので、ホテルへたどり着くまでのあいだ、僕らの出会いを伝えることにした。 コーヒーをひとくち含み、そして僕は口を開く。 それはずっと昔、もう10年以上前のこと。 確か日本では中学生になったばかりの頃だろうか。