「うん、いいよ!」 昼休み――俺が人気ひとけの無い廊下に、如月先生を呼び出してあるお願いをすると、話を聞いてすぐ如月先生が快諾してくれた。 え、そんなあっさり!? 話を持っていった当とうの俺は、あまりの先生の快諾具合に驚いていた。 なんせ話が話だ。 俺は先生を説得する為に交渉材料も持って来てたのだが――見事に無駄になった。「あの先生……随分とあっさりでしたが、株の知識はありますか……?」「ん~? さっぱり! でも、海斗ちゃんがお願いしてきた事だから、君にはいつもお世話になってるし、全然いいよ!」 如月先生はそう言うと、締まりがない顔で笑った。 ……どう考えてもおかしいよな……? ただ、この人は常識が通じないからな……。 株の知識が無いって言ってるし、事の重大さがわからずに、能天気にOKしているだけだろう。 ならば、わざわざ詳しく説明して不安がられるより全然いい。 それに、もう一人昼休みの間に会っておかなければいけない奴がいるから、ここで時間を使わなくて済むのは有り難い。「それじゃあ、またその時に連絡させて頂きます。それと先ほども言いましたがこの話は――」「わかってる、西条さんからされたという事にしとくよ」「お願いします。では、僕はこれで」「うん、もうすぐテストなんだし、勉強も頑張ってね!」 俺は如月先生の言葉に頭を下げ、次の目的の相手がいるとこを目指す。 ……正直言えば、如月先生に任せるのは不安が残る。 しかし、他に頼れる単純そうな大人が居ないのだから仕方がない。 そして次は、正直気が引ける相手だ。 しかしそいつの協力が無ければ、完全に雲母を守る事が出来ない。 俺がそいつの教室――と言っても俺のクラスの隣なのだが、目的の人物は女の子数人と弁当を食べていた。 うぅ……入りづらい……。 俺はそう思いながらも、その学生に近寄る。 本当なら雲母にこういう役目は任せたいものだが――今回はお金が絡む。 例え普段はかなりの善人だろうと、人はお金が絡めば別人になる。 だから信頼できるかどうかは、自分の目で確かめたかった。 そして雲母を連れてこなかったのは、ただ単にその学生が雲母を苦手としているからだ。「おや、これは珍しい人が来たね」 俺がその学生に近寄ると、そいつは人懐っこい笑顔を俺に向けてきた。「久しぶり。少し話がしたいんだが、いいか?」「……へぇ、去年とはずいぶんと様子が変わったね。いいよ、すぐ食べるからちょっとだけ待ってて」「ありがとう」 俺はそう言って、その学生――白兎しろうさぎ凪紗なぎさを廊下で待つことにする。