「それって、私が単に殿下に特別嫌われているってことですかね……」「いや、そうではないと思う。きっと、逆なんだ。……リョウが婚約者としてきてくれたことは、きっと殿下に良い変化をもたらしてくれる気がする」 そうなんだか人を疑うことを知らない純粋な笑顔でカイン様が私を見るけれど、私はそうは思えないよ!? 先ほどの言動の中で、いい変化の兆候あったかな!?「いえいえ、そんな感じにはちょっと見えないというか……。やっぱり、私が嫌われてるという線が一番固いです。殿下はカイン様のことを気に入ってますし、だからああいう発言を控えてるというか……。もしかしたら、私に対する悪口として家畜扱いされてる気さえします。先ほども私のことしか家畜家畜言ってなかったですし」 それに、非魔法使い全員を問答無用で家畜だと思っているというよりは、私個人のことが嫌いで私だけ家畜扱いしている方が、まだ救いがある気がする。 ただ、私だけを家畜扱いしてくる人が私の婚約者であるという辛すぎる事実は変わりないけれども。頭がいたい。「いや、家畜と言ったのはリョウのことだけを指したわけではなかったよ」「そうでしたでしょうか? 私のことばかりだったような……」 と恨みがましく言うと、カイン様が軽く首を振った。「ヘンリー殿下の最後の言葉は、私に当てた言葉だったからね」 カイン様が、そうぽつりと、少しばかり悲しそうにそうおっしゃった。 ゲスリーの捨て台詞は、カイン様に向かって言ったこと……? 私はどうしてそう思ったのか聞きたかったけれど、カイン様がなんとなくあまり深く聞かれたくなさそうだったから、私は口をつぐむことにした。