新たな出会い?「いやぁあああああああああああああっ! 何ですかあの牛!? トゥースさんくらいの大きさありましたよ!」「あぁ、確かにそうだな。ざっと六メートルくらいか? だけど安心しろシロ」「え、何です!? 何か秘策でも!?」 パァっと明るくなったポチに、俺は笑みを浮かべる。「トゥースよりは強くないからな」「いやぁあああああああああああああっ! あれってアレですよね!? 天獣! 赤帝牛ってやつですよね!? あんなのと戦ったら私死んじゃいますよ!」「はぁ……ったくしょうがねぇな。いいか、これを聞いて安心しろ!」「おぉ! 何か必殺技でも!?」 一瞬で泣き止んだポチに、俺は再び笑みを浮かべる。「お前も天獣だ」 ばちんとウインクを送ってやると、ポチの涙は弧を描くように、そう、それはまるで噴水のように飛び出たのだった。 あれ、どうやるんだろう? そんなやりとりを何回、いや、何十回と続けた後、宿の中でレオンにミルクをやった。「もう、せっかくの観光が台無しですっ。ぷんぷんですよ、私は!」「おー、それは何よりだ。何だかんだ言っても逃げ腰にはなってないみたいで安心したよ。なぁチャッピー?」「えぇ、流石母上です!」「そ! そうですかぁっ?」 でへへと喜ぶポチに気持ち悪さを感じたが、俺はその後黙ってしまったチャッピーの方が気になった。「……? どうしたチャッピー?」「去り際に見たあの目、あの牛は敵です!」 これは珍しい。 チャッピーが殺意を向けてくるモンスター以外に敵意を示したのは、レオンのオムツ以来だ。 ……ん? 待てよ? 確か天獣って、天獣同士で縄張り争いをしていたとかいう逸話だか伝説があったな? チャッピーは無意識でそれを感じたって事か? しかしそう考えると、ポチはそうでもないような? ……むぅ、わからん。「にしてもお前たち……ソレ、相当気に入ったんだな」「「え?」」「それだよそれ。そのサングラスってやつ」 ポチは泣き終わった後再び掛けていたし、チャッピーなんかずっと掛けている。「これは紫死鳥必須のアイテムだと思います!」「私も気に入りました! 父上から送って頂いた素晴らしい品、生涯大事にします!」「お、おう。気に入ってもらえたのなら何よりだ」「だっ!」「お前もな、レオン」 レオンの愛嬌に癒されて思わずにやけそうになる。 しかし、不穏な魔力の揺らめきが俺にそれをさせなかった。「シロ、気付いたか?」「えぇ、勿論です。しかしこれは……酷いですね?」「あぁ、ご飯を強請るシロみたいに荒ぶった魔力だ」「なっ、私こんなに下手な監視はしませんよ!」 まぁポチの食欲はこんなもんじゃないからな。 にしても、ダグラス家の戦力が一気に減ったというのは驚いたな。 ポチは窓近くの椅子にお座りし、度々サングラスが落ちそうになっているのを支えながら窓の外を見ている。 レガリアに着いて半日ちょっと。遂に俺たちに監視が付いた。 が、しかし無名やチキアータのような手練れではなく、本当に監視者なのか? という不安を覚える相手である。 だが仕方ないか。チキアータがあの後どうしたのかはわからないが、あの連中は未だにトウエッド付近にいるだろうからな。 あの襲撃チームと無名がダグラス家の全戦力って事なのか? そういう事なら有難い事だ。 監視者はブライト少年以下のレベル帯だろうし、これなら尾行を巻く事も難しくないだろう。「まぁ念には念を……って事で、交代で相手の動きを把握しておこう」「では私からやりましょう」「チャッピー? 別に構わないけど、大丈夫か?」「あの程度の相手なら問題ないでしょう