「桃井、ちょっとこっちを向いてほしい」「ん? どうしたの?」 桃井は首を傾げながら、俺の顔を見上げた。「二度目になるけど――誕生日おめでとう、桃井」 俺はそう言って、桃井に誕生日プレゼントを渡した。「わぁ……凄く嬉しい……。開けてみても良い?」 俺は桃井の問いかけに頷くと、桃井は丁寧に袋の包みを開けた。 そこから出てきたのは、羽をモチーフにしたペンダントだ。 ただそれだけではなく、羽の根元には七月の誕生日石である小さいルビーが埋め込まれている。 とはいえ、それはガラス細工で作られた偽物だ。 流石に本物を使っていると値がはるため、彼氏じゃない男が高い物を贈ると引かれるとネットで調べていたため、そこまで高くない物にしたというわけだ。 しかし、しっかりと羽自体も丁寧に作られており、見た目的に気に入ったので俺はこれにした。「……ねぇ、海君?」「ん?」「これ……海君から私に着けてもらってもいいかな?」 そう言って桃井が俺にペンダントを渡し、自分の髪を手で持ち上げた。 ……まじで? 俺が桃井に着けるの……? 俺はそう思って桃井を見るが、桃井の目を見て桃井が引かない事を理解すると、桃井の首の後ろに手を回し、ペンダントを着けてあげた。 そのせいで桃井の顔が凄く近くにあり、若干抱きしめている様な形になる。「えへへ……ありがと」 桃井はそう言うと、凄く愛おしそうにペンダントを手の平で持ち上げた。 そして、また俺の方を見上げる。「ごめん……もう一つ、我が儘を言ってもいいかな?」「なんだ?」「あの……これからは、咲姫って呼んでほしいの……」 桃井は恥ずかしそうに目を逸らしながらそう言ってきた。 ……そうだよな。 桃井が海君って呼んでくれてるんだ。 俺も家族なら、桃井の事を苗字呼びするのはおかしいよな……。「うん、わかった。これからは咲姫って呼ぶよ。改めて宜しくな、咲姫」「あ――うん! よろしくね、海君!」 俺が咲姫と呼ぶと、咲姫は凄く嬉しそうに笑った。 本当、こいつは無邪気だよな……。 俺はそんな咲姫の表情を見て、自分の中に広がるモヤモヤから逃げるように、丘から見える夜景へと目を逸らすのだった――。