真ん丸に見開かれた瞳は綺麗なもので、むにむにと唇は歪んでいるものの否定をするような言葉は出てこない。いやきっと、少女も同じことを思っていたのだろう。 どちらも否定することなく見つめあっているものだから、代わりにおじいさんが声を上げることになった。「なんだおまえたち、まんざらでも無い顔をして。ははあ、なら退職してここを継いでもいいぞ」 皺だらけの日焼けした腕で黒猫を抱き上げると、にうと小さく鳴いてくる。 それがまるで「その通りよ」と言っているように聞こえたが、なかなか僕らは否定の言葉を出すことは出来なかった。