「魔法、です」「あんな、魔法は見たこと無い……それに、君は、魔法使いじゃなかった、はずだ」 困惑しているのか、セキさんはそう言って、両手で顔を押さえた。多少、予想はしていたけれど、あまりのセキさんのうろたえように思わず言葉に詰まる。 コウお母さんが、気遣わしげに、「セキ……」と名を読んた。 セキさんは、再び顔をあげる。「……昔、アニエスにそういう魔法があると聞いたことがある」「アニエス?」 あ、たしかアニエスさんって、セキさんの亡くなった奥様だ。王族の、魔法使い……。「私の妻だった。亡くなってしまったが……。彼女は王族だった」「セキさん、それ……。アニエス様は、このような魔法についてなんとおっしゃっていたんですか?」「あまり詳しくは、聞いていない。昔は、生物魔法というものがあったらしいという話だけをきいた。私が何度か聞いても、アニエスはそれ以上のことは話したがらなかった」