しかし、そこには馬車どころかキュベロの姿すらなかった。 ただ、その代わりと言っては何だが、そこには――「……シルビア?」「う、うむ。遅かったではないか、セカンド殿。待ちくたびれたぞ」 若干の緊張が窺える、着飾ったシルビアの姿があった。私服は随分と久々に見たが、やはり元が美人だからか相当に似合っている。 そして、シルビアは頬を朱に染めながら喋り始めた。「ほら、約束したではないか。精霊チケットの……わ、忘れてしまったか?」「いや覚えてるが。休日に買い物と言ってなかったか?」「これから忙しくなるだろう。少しでいいんだ、付き合ってくれ。適当に店を覗いてから、ゆ、夕飯でもどうだ?」「うん、良いな。実に良い。昔を思い出すな」「うむ。とは言っても半年ほど前だが……何だか遠い昔のような気もするな」 他愛のない会話をして、笑い合って、面白おかしく買い物して、昔のように宿屋一階の酒場で楽しく酒を飲んだ。 やっぱり、シルビアとはこんな感じの男友達のような付き合いが向いている。 ……と、そう思っていたのだが。 二人で飲んでいるうちに段々と良い雰囲気になり。 シルビアの猛烈なアピールが炸裂しまくり。 あれよあれよという間に。 俺たちは、二階へとその場所を移すことになった――