ああ、そういえば。 歴史ある神社もあるし、冬場にはスキー場だってある。ただこの金額は、社会人でも重みを感じさせるな。 それからおじいさんは、ひょいとマリアーベルへ視線を向けた。「暇になったらまた来なさい。俺はいつでも待ってるからさ」「はい、おじいさまっ。必ず遊びに行きますっ!」 どしりと勢いよく抱きつく少女に、おじいさんは面食らう。 なにしろ素直でとても良い子だ。温かくも楽しいひと時を過ごし、そしてまた僕らにとって深い理解者でもある。 老人に頭を撫でられているうち、別れの気配にマリーはぽろぽろと涙をこぼしてしまった。「あー、こりゃあ駄目だな。俺まで……」 珍しく目頭を押さえるおじいさんも、きっとエルフの純粋さに打たれたのだろう。いくら頭が良くても世間に揉まれていても、根の部分はとても綺麗だと知っている。 さようならと手を振りあい、そして僕らは青森を後にした。 いくつかのトンネルを抜けたころ、新幹線の席にはお弁当が並べられた。名物の「ほたて弁当」それに「青森づくし弁当」は、いかにも美味しそうな色彩を見せている。 それに舌鼓を打ちつつも、ときおり少女は窓の外を眺める。 山深くも情緒ある青森を、きっと思い浮かべているだろう。「さて、どうだったかな青森旅行は」 カゴのなかにいる黒猫へ「ほたて」を差し入れしながら僕はそう尋ねる。単純に、初めての新幹線旅行の感想を聞きたかったのだ。 少女はくるりと振り返り、そして何故か僕の顔をじっと眺めた。一呼吸置き、とても綺麗な笑みを浮かべてマリーはこう答えてくれる。「んふ、最高」 言葉すくない感想にはたくさんの思い出が詰まっているようだ。 ならば後はもう美味しいものを食べ、そして残りの連休を楽しむべきだろう。 ゴウ!と新幹線がトンネルを抜けると、気持ちの良い青空が広がっていた。 やあ、とても楽しかったよ青森は。