悪魔 黒い悪魔……つまりこいつが絶望の使徒か。 ポチが萎縮しながらも対峙出来ているだけ、まだマシか。 肩を丸めながらも体長は6メートル程。トゥースと同じくらいのサイズだろうか。 どうやら生殖器は付いていないようだ。ぱっと見たところ黒いだけの巨人系モンスター……だが、内包する魔力も、纏う魔力も相当なものだ。 それに頭の両側から出ている二本の角。赤帝牛のそれより禍々しくうねっている。 そういえば、以前、絶望の使徒であればジョルノとリーリアの二人で対処が出来るとジョルノ本人が言っていた。 こいつの戦闘力。おそらく聖戦士候補だった俺と同程度の強さ……だろうか? という事はあの二人、まだ聖戦士候補なのだろうか? 俺がいち早く聖戦士となった? いや、あれから一年経っているんだ。もしかしたらあの二人も聖戦士になっているかもしれない。 だが、何故俺たちの前に現れたんだ? ここはジョルノだろう。是非ともジョルノの下へ行って欲しい。むしろ何故ジョルノじゃないのかと聞いてみたい。ジョルノジョルノジョルノジョルノォオオ……っ! つまるところ、俺は今、おうち帰りたい。 きっとそれはポチも同じ気持ちだろう。「答エヌカ。イヤ、マテ…………ソウカソウカ。貴様ガアノポーアカ……」 一体どのポーアなのだろう。 何かを思い出した素振りだったり、考える仕草だったり、まるで人間のようだな。 しかし何故この悪魔は俺の名前を知っているのだろう? おっと、ポチのヤツ震え出したな。やはりこの圧力はちょっとまずいか。 俺はポチの背から降り、その頬を何度か撫でた。「ここはいい。赤帝牛のところに行ってろ。何かあれば念話連絡で知らせてくれ」「しかしマスターッ――――」「――――大丈夫だ。この戦いを乗り越えれば、お前もまた強くなるさ。だから今は生き残る事を考えろ」 ポチはしばらく黙り、そして申し訳なさそうな顔をしながら空間転移魔法陣に乗って消えて行った。 躊躇いこそしたが、素直に従ってくれたのは今の俺を信頼してくれたからだろうな。「ソレダ」 悪魔が空間転移魔法陣を指差す。「貴様、何故空間転移魔法ヲ知ッテイル? ソレハ我ト、我ガ主シカ知ラヌハズダ」「ノーコメントだ」「ソレニ理解デキヌ事ガモウ一ツアル。四ヶ所ノ空間転移魔法陣ノ不規則性。ソノ中ニ確カニアル規則性。アレハドウヤッタ?」「それも、ノーコメントだ」「二ヶ所ナラバ移動シタイ空間転移魔法陣ヲツナグ事ハ可能ダ。シカシ、貴様ハマルデ、行キタイ魔法陣ニ移動シテイルヨウダッタ。ソンナ事ハ不可能ダ……」 これも人間らしい。 俺のような知識欲。そして俺がやった移動法の不可解に気付いている。 本来、空間転移魔法陣は、二つの地点を結ぶ魔法だ。互いの空間転移魔法陣の公式に、互いが結びつくような特殊な式を組み込む事でそれが成立する。 しかし、俺が作った空間転移魔法陣は四ヶ所。 この四ヶ所を移動するとなると、前回の炎龍の群れとの戦闘時のように、「近くの空間転移魔法陣にランダムで移動する」という公式を組み込んだりする必要がある。 悪魔が疑問に思ったのはその先の事だろう。俺がこの四ヶ所間の移動を、ポチに乗りながら好きな空間転移魔法陣へ移動していたと判断した。 その慧眼、見事というしかないな。確かに俺は意図した空間転移魔法陣へ移動していた。 悪魔はそれをどうやったのか知りたいようだ。「ホウ……フムフム、ナルホド……」 ポチの移動先を見たか。ポチすらも意図した場所への移動が可能だと知られてしまっては、答えに行きつくのは早そうだ。 ポチには以前説明したから、その移動法を知っていた。 この時代の者にはバレる事はないと思っていたが、いささか悪魔の洞察力を舐めていたかもしれないな。「ソウカ、空間転移魔法陣ヘノ搭乗進路カ