アズリーを気に掛けるブレイザーの言葉を聞き、ブルーツ、ベティー、リード、マナがくすりと笑う。「かかかか、珍しく饒舌だな、ブレイザー?」「こんなに喋るリーダーは初めてかもしれないわねっ♪」「ホント、リナの事を話す兄貴みたい」「っておい! オチに俺を使うんじゃねーよ!」 そんなやり取りを見る春華の表情はどこか嬉しそうである。(皆さんがアズリーさんの話をすると、皆さんが笑顔になりんす。本当に不思議な方ですね、アズリーさんは……)「ねぇねぇ」「ひゃいっ!?」 そんな春華の顔を覗き込んでいたのは、きょとんと首を傾げるナツだった。 抜けるような奇声に、皆が目を丸めて春華を見る。「どうしたの、華お姉ちゃん? そんなに嬉しそうにしてー?」「あ、えっと……それはでありんすね? それはでありんすね? ……それはでありんす……」 上手い言い訳が思いつかず、延々と同じ言葉を連呼する春華を、ベティーがにんまりと見つめる。「春華はアズリーが大好きだからね~。好きな人が褒められると嬉しいだけだよ、ナツ」「あー、そういう事かー!」「うぁ!? ちょっとベティーさんっ!? 酷いでありんすっ!」 うししと笑うベティーを、春華は剥れて、しかし赤くなって睨んだ。「そうかそうか。そういえばマナもそんな感じだよな」「ちょ、ちょっと兄貴!? 仕返しにしては性質が悪すぎでしょう!」 マナがリードの胸倉を掴んで肉薄する。その表情、鬼のようである。屈強なリードが目を背ける程に。「かかかか、面白ぇな本当に。ま、アズリーの人気は皆が知るところだが、ライバルは多そうだな。リナにティファにベティー、それに春華とマナか。おっと、アイリーン様を忘れてたか、ははははは!」 指を折りながら人数を数えるブルーツの頭を、魔力で覆われた硬い拳が襲う。「いてぇえええええええええっ!?」「何さらっと私を数に入れてるのよ糞兄貴! 億枚におろしてチリトリにぶち込んでやろうか!?」 そんなベティーの啖呵を、頭を抱えてのたうち回るブルーツが聞いている余裕は、どこにもなかった。「はははは、あれは流石に酷いんじゃないか、イデア?」「酷いと思うのであればデリカシーが欠けてるわよ、ミドルス」「うぇ!? まじか!? ……すまん、気を付ける」「ま、まぁ、ちゃんと受け取ろうとするのは悪い事じゃないよ」「そうかっ!」 イデアのフォローにより表情を明るくするミドルス。 その二人のやり取りを見ていたライアンが、楽しそうに自らの顎を撫でた。(ふむ、最近のあの二人……とても仲がよろしい。やはりあのベイラネーアの悲劇は……全てが悲劇でなかったという事か) うんうんと頷くライアンに、レイナがただならぬ眼差しを送っていた事。それに気付いているのは…………リーダーのブレイザーだけである。(……傍目八目というやつか。チームが大きくなればこういう事もありえるか。もっとも、レイナのあの視線はチーム入り前からだが……) そんなブレイザーの視線に気付いたのか、レイナは目を伏せて照れてしまう。(誰も気付かないのは、あの注意力のせいかもしれないな……) 自分なりの回答を出したブレイザーが岩から腰を上げた。 すると、そんなリーダーの行動を見て、全員が立ち上がり始める。「出発する。まだまだ山脈は続く。各自注意を怠るな」「「応!」」「今日の目標はあの山の頂上――――むっ?」言葉に詰まったブレイザーを見て変に思ったブルーツが近くへ歩みよる。 そのブレイザーの視線は、目指そうとしている山の方から動いてはいない。「何だブレイザー? 良い女でも見つけたか?」「モンスターが闊歩するこんなところにそんなのいる訳ないでしょう!」 ベティ―が再びブルーツをぽかりと殴る。「もう、どうしたのよブレイザー? 何が見えたの?」「あ、いや、一瞬黒い影が通ったように見えただけだ。気にするな。どうやら気のせいだったみたいだ。よし、行くぞ!」「「応っ!」」 トウエッドまではまだ遠いが、銀の皆は着実に歩を進めている。