****** Result for Image/Page 9 ******大きくを吐くとともに、ジークルーネは身体からカを抜いていく。両手に構えた刀を降ろしたまま体力の問題ではないこの姿勢が最も脱力した理想の型だったからだ。彼女は知るよしもないが、今の彼女の構えは、かの大剣豪、宮本武蔵が描き遺した自画像とまったくの瓜二つであった。「ふふつ、あの一戦の最後を思い出すな」ジリジリと間合いを詰めつつ、シバが言う。彼の言うのは、《炎》族都での戦いの最終局面のことだろう。居合により迎撃体勢を取ったジークルーネと、それを崩さんとジリジリと間合いを詰めお互い技こそ違うが、確かに似た構図になっていた。「これがおそらく、今生で交わす最後の言葉となるだろう。何か言い残すことはあるか?《鋼》の宗主に伝えておいてやろう」「ない。勝つのはわたしだからな」一吐かせ。今回も俺だ」****** Result for Image/Page 10 ******互いの間合いのギリギリ外のところで、啖呵を切り合う。これ以上、戦士に言葉は不要。彳は剣でもって語るのみ向き合うこと数秒、永遠とさえ思えたその数秒の中で、不意に心の湖面に波紋が広がるのを感じ、ジークルーネは後ろに跳び退くついでシハの身に起こるわずかな起こり。次の瞬間、彼女が元いた位置を四つの銀光が貫く。「なっ」あっさりとかわされたことに、シバの顔が信じられないものでも見たように目を見開く。一瞬の内に相手の眉間、両肩、胸の四箇所を突く。神速状態でのみ繰り出せる至高の奥義と言うに相応しい代物ではあった。だが、どんなに速く優れた技であろうと、いつどこに来るのかわかっていれば、それこそ素人でもかわしようはある。ジークルーネは絶妙のタイミングで後ろに跳んで「間」を外すことで、シバの攻撃の届かぬ距離へと逃れたのだ。****** Result for Image/Page 11 ******わずかでも動くのが早ければ、シバはそれを視て更に一歩踏み込んできていたであろう。後ろに退く速度と、前に進む速度。どちらに分があるかは言うまでもない。そうなれば、回避はまず不可能だった。(ここだっ!)勝機を見定め、ジークルーネは大きく踏み込むや愛刀を斜めから切り上げる。さしものシバも四連続の突きなどという大技のあとだ。身体が思うように動かないのか反応が鈍い。対処能力に優れたシバのことだ。水鏡の境地にも即座に対応する可能性は高い。ここで決めねば、勝機はないだろう。そのジークルーネの渾身の一撃はガンツ!シバの左肘に刀の腹を叩かれ打ち落とされる体勢的にそうでなければ間に合わぬと踏んだからだろうが、それにしても素手で真剣を払おうとは狂気の沙汰である****** Result for Image/Page 12 ******110神速の境地と、シバの経験、戦闘勘があってこそ為せる絶技であった。もっともそれはすでにジークルーネも織り込み済みのことであった。さすがに肘で打ち落とすとは田5いもしなかったが、この男なら防ぎかねない。そんな確信があったのだ。ゆえに、今の一撃は布石。「あああっ!」獣のごとき咆哮とともに、ジークルーネは左の刀で斬りつける。神速で。先の睨み合いの中で、ほんのわずかにだが体力は回復していた。身体に残ったカのありったけを注ぎ込んだ、正真正銘、全身全霊の一撃ー「ぬうつ!」それでもシバは超反応で愛刀でもって防ごうとしその防御をジークルー不の剣はすり抜け、シバの身体を斬り裂いた。「がはっ!」