「それじゃ、一斉に赤ん坊だらけになったりしないか?」「その時期はバラバラに来るから、それはないにゃ」「そうか……」 2人と話していると、アネモネが家から走ってきた。 プリムラから説明を受けたせいか、それとも鎮痛剤が効いているのか、彼女の顔はいつものように明るさを取り戻している。「ケンイチ!」 アネモネが俺に飛び込んでくると、その後から、プリムラもやって来た。「プリムラから、話は聞いたかい?」「うん! 私、赤ちゃんが産めるようになったんだって!」「そうだ、今日はお祝いをしないとな」「うん! 私、ケンイチの赤ちゃんが欲しい!」 俺は家に戻るために、飲みかけの缶コーヒーを空にしようと口をつけていたのだが、それを吹き出した。「ゲホッ! ゲホッ!」「どうしたの? ケンイチ」「ゲホ――まぁ、アネモネ落ち着きなさい。そりゃ確かにその通りなんだが、君のその小さい身体じゃちょっと無理だ。もっと大きくならないとな」「じゃぁ、どのぐらい?」「そうだなぁ……後、5年ぐらいは……」「そんなに?」「だって、胸も大きくならないと、赤ちゃんに乳もあげられないし……」「まぁ、アネ嬢。旦那の言う通りだな。もうちょっと待った方がいいと思うぞ」 大体12歳ぐらいから働き始めるこの世界だが、さすがに結婚して子供を産むのは15~17歳が多いようだ。「解った……」 納得したようなアネモネの後ろで、プリムラが怖い顔をしており、俺の手を引っ張ると耳打ちをしてきた。「ちょっと、本気なのですか?」「まぁ、待て待て。今はあんな事を言ってるけど、年頃になれば、街で知り合ったちょっと見てくれの良い若い冒険者とかに、コロリと惚れちゃう事だってある」「そうでしょうか?」「『私、お父さんと結婚するの!』とか言ってた娘が――突然、見ず知らずの男を連れてきて、『この人と結婚したい!』とかいうのは、よくある話だろ?」「それは、私に対する当て擦りですか?」「え? プリムラもお父さんにそう言ってたの?」「……」「ああ、可哀想なマロウさん」 今度はプリムラの機嫌が悪いのだが、どうしようもない。現時点では先延ばしが最善策だろう。