ひどく真面目な顔で願ってきたヴォルフに、二つ返事でうなずいた。 やはり複数で投げナイフにしたいのだろう。そう考えつつ、作業場に戻る。 幸い魔剣の材料は在庫があるので問題ない。ただ、銀のリングは同じものがない。「リングは同じものがないので、適当な金属から同じ形に加工していいです?」「いや、リングを外して、ワイヤーで短剣同士をつなげてほしいんだ」「わかりました」 ヴォルフは二本を同時に引き戻す形にしたいのだろう。 ワイヤーの長さはあまりいらず、片方の柄のところで長さ調整・固定ができるように希望された。 真ん中の方が楽ではないかと尋ねたが、かえって邪魔になるという。 投げるときにワイヤーが指に当たらないようにしたいのだろう、そう理解して調整した。 できあがった短剣を渡すと、ヴォルフは二本を同時に振る。 ダブルで聞こえる風切り音は、なかなか迫力がある。本音を言うとちょっぴり怖いほどだ。「これならいける気がする……」 納得し、うなずいた彼と共に、再び庭に出た。 ヴォルフはさきほどの板の手前、長めの薪を一本立てる。 薪にどこまで深く刺さるかの確認だろう、そう思いつつ、先ほどと同じように離れた。 金色の目がじっと板を見つめ、呼吸を整える横顔が見えた。 ヴォルフは両手に一本ずつ持つと、勢いをつけて投げる。 ビュンと風を切る音が、先ほどの倍以上、重なって響く。 あとはまた同じ、速すぎて目で動きを確かめるのは無理だった。「え……?」 ヴォルフは薪から短剣を外したらしい。 短剣は二本とも後ろの板を割り砕いて、その先に落ちていた。 が、手前の薪は倒れもしない。 ミスリル線が外れたか、そうあわてたとき、薪の上半分が滑るように落ちてきた。 輪切りになった薪の切り口は、腕のいい剣士が一刀両断したような滑らかさ。 二本の短剣をつなぐミスリル線が、完全に刃物の役目を果たしている。