活真と真幌がいつまでもいつまでも大きく手を振る姿がやがて小さくなって消えて行き、それを優しく飲み込んでいく那歩島の自然や傷跡もまたゆっくりとしかし確かに遠のいて、そしてついには広く青い海と空の間に紛れてしまった。からりと軽い空気に咲き乱れる赤い花、寝泊りしていた旅館の畳のかすかなイ草の香り、寝ても覚めてもそこにあった海風と優しく響く波の音、目を閉じればあの温かい島の全部がまだそこにあるようだった。一人一人の顔も名前も笑顔も鮮明に思い絵かげてしまうほど、親密に関わり合った島民達とはしばらくもう会えないのだと思うと、胸の奥がつんと滲みた。けれど、守れて良かったと、心から思う。島を、島の人たちを、あの小さな姉弟を、彼らの営みと夢を。