「……え、えへ、へ……」 真っ赤な女の子と化した琴音ちゃんだが、嬉しそうに微笑んでくれる。これが女神か。 幸せな気持ちで、手が離れないよう並んで歩きだす俺たち。はたから見るとおそらくあまーい。練乳特盛。 そのまましばらく、糖分を満喫しながら歩いていると、エンカウント発生。「……祐介!!!」 後ろから俺を呼ぶ声に驚いて、二人同時に振り向く。「な、なんで、白木さんと、手を……なんで、なんで……」 佳世だ。俺たちから少し離れた後ろで、わなわな震えている。 うわ、見つかった。 まず最初に思ったことはそれだったが。「……なんで、なんで白木さんと手をつないで、歩いてるのぉぉぉぉ!!!」 すっごく焦るような怒ってるような佳世の様子に、ニセモノのつきあいを始めた理由を思い出した。 琴音ちゃんは慌てているが、心配ないよとばかりに手を少し強く握る俺の様子に、少し落ち着いたようだ。「……なんでって、そりゃ、俺としら……琴音はつきあっているからだよ。見てわかんないか?」 近づいてさらに動揺が増しているらしい佳世を、あからさまに挑発。ヒビ〇ダンを見習っていこうぜ。「つ、つき……なんでよ! 祐介にはわたしがいるじゃない!」「佳世とははっきり別れたはずだが。土曜日にな」「別れてない、別れてない! そんなの認めない!」「……ちょっと何言ってるかわかんないんだけど」「認めない! 認めないから! 祐介はわたしの隣にいないとダメなの! 祐介のいる場所はわたしの隣なの! 白木さんの隣じゃないの!」「……ふーん。ベッドの中では池谷の隣にいるくせにな」「違う、違うの! わたしの彼氏は祐介だけなの! わたしには祐介だけなの、そして祐介にはわたしだけなのぉぉぉぉ!!!」 髪を振り乱しながらの絶叫。なんかおかしくなってないか、佳世。果たして日本語が通じるだろうか。 まあ、通じなくても言うだけだけどな。「……都合のいいことばかり言ってんな。じゃ、池谷は佳世のなんなんだ? セフレか?」「……」「そんなふざけた理屈で、俺だけじゃなく琴音まで泣かせやがって。許せるわけないだろ」「……」「だから俺は、佳世と池谷に泣かされた琴音とお互いを癒し合うために、琴音のそばにいることに決めた」「……いや、いやぁぁぁぁ! だめぇぇぇぇ! まだ別れてない、わたしは別れることを認めてないから、まだ別れてない! たとえセフレだとしても許さない!」「……別に許されなくてもいいわ。佳世が俺と別れてないうちに池谷というセフレを作ったんだから、俺だってたとえ佳世と別れてなくてもセフレを作ったってまったく問題ないだろ?」 売り言葉に買い言葉。 そう考えれば俺が誰と歩いてようが手をつないでようが、まったく佳世には関係ないな。俺は佳世の所有物じゃねえもん。