あ、リッツ君とアランの姿が見える。 二人も心配してきてくれたのかもしれない。 よし、二人のもとに行こう。 私はこっそり窓から女子寮を抜け出し、回り道してアラン達がいた方へ向かう。 別に正面玄関から出ても良かったんだけど、それだとかなり目立ちそうだし、また確実にモーゼられるので、こっそり。 しかし、裏から回ってきたのは正解だったみたい。 思ったよりもたくさんの男子生徒が女子寮の前にいる。 ちょっと圧倒されていると、アランが手を上げて、こちらに歩いてくるのが見えた。「リョウ!」 アランが、私に向かってそう声をかけると、一瞬にして私とアランの間にまたしても、モーゼの奇跡が……。『リョウ様とアラン様のお通りだ!』 みたいな声が聞こえる……。 こっそり裏から回ってきた意味がなくなった。 みんな、気遣い過ぎだよ。そんなにモーゼしなくても合流できたよ。 若干周りの俊敏な動きに私が引いている中、アランはモーゼの奇跡なんか気にせず私の方にやってきた。「リョウ! どうだった? カテリーナ達の様子。元気だったか?」 やっぱり、アラン達も心配してこっちに来てくれたんだね。 私は、微笑んで頷いた。「元気そうでした。とりあえず、立ち話もなんですし、場所を移動しましょう」 なんとなく、人目もあって、一部の生徒の安全が分からない状況で、このままアランと私の会話が聞こえてしまうのもいらぬ憶測を生みそうで場所替えを提案した。 すると気の利くリッツ君が、食堂のテラスに行こうと言ってくれてそこに移動する。 もちろん私たちが移動するとなれば、モーゼの奇跡が……。 私達は、人波を割りながら、食堂のテラスに向かいその中でも個室の部屋へと着席した。 そわそわしているアランは、じれったそうに「それで、カテリーナ達は、無事だったんだな!?」と聞いてきた。 まあまあ、落ち着きたまえアラン氏。 アランは結構友達思いというか、熱いところがある。 さすが義侠心溢れる我が子分だ。 私はゆっくりと頷いた。