セカンドは、レイスによってsevenの姿に化けたのだ。しかし誤算だったのは、レイスがsevenのキャラクターデータを複製できたまではよいものの、装備データまでは呼び起こすことができなかったのである。結果、超絶にダサい格好となってしまった。「センパイ、機嫌ええなあっ!」「おっ。まあな~」 突如ウッキウキとなったラズベリーベルが、満面の笑みでセカンドへと話しかける。セカンドは「そうかあいつが」と納得し、ひらりと手を振って答えた。 依然として絶体絶命のピンチだというのに、聖女はどうして笑顔に……? と、誰もが疑問に思ったが、ラズベリーベルにとっては地球が自転するくらい当たり前のことであった。 ついに、この目に姿を見られたのだ。この耳に声を聞けたのだ。その上、言葉を交わせたのだ。喜ばないわけがないのである。そして、sevenが、センパイが、狂化剤を使った程度の相手に負けるわけがない。それは当然中の当然であった。「すげー良いもん見ちゃったからなぁ」 一方、セカンドが上機嫌な理由。これは非常に趣味が悪いと言えた。 彼は暫くと見ていなかったのだ……「全身全霊を賭した者同士の対戦」を。 10分後に確実に死ぬ者と、ステータス20倍のバケモノに死を覚悟して立ち向かう三人。それは、セカンドにとって最高の“見世物”であった。メヴィウス・オンラインの時代でさえ、ここまで鬼気迫るPvPは滅多になかったのだ。 ゆえに、セカンドはついつい長いこと眺めてしまった。 本当なら、もう少し早く出ていけるはずであった。そう、ロックンチェアが現れた頃くらいには。 だが、思いのほかロックンチェアは頑張った。ギリギリのスレスレを3分間も。「そりゃ見ちゃうだろ」と、セカンドは当然のように言う。彼にとっては、三人の命の危機よりも、血湧き肉躍るPvP観戦の方が優先順位が高かったのである。「俺の名はsevenだ。そっちは?」「ネクス」「よろしく、ネクス。狂化剤を飲んだお前に敬意を表する」「……ザレゴトを」 残り時間、3分。 狂化ネクス vs アロハ野郎 二人の対戦が、今、始まる――。