「……お二人が落ち着いていて驚きました。私が結婚するときなんてすごく悩んで、親や友達とたくさん相談したのに」「僕も悩みましたよ。だってエルフ族と人間ですからね」「相談、たくさんしてください。私と徹さんもできることは何でも協力します。北瀬さんは大事な読書友達ですからね」 よいしょと火とかげを胸に抱えながら、あどけない顔だちに合わない大人っぽい笑みを浮かべてくる。それはやはり落ち着いた彼女らしい表情であり、僕の不安や憂いを少しだけ取り除いてくれるものだった。 バケツを手にしたマリーが戻ってくると、だんだん芋の焼ける甘い香りが辺りに漂い始める。 ひょいひょいとリザードマンが追加で芋を放り込んだのは、僕らの釣果が皆無だと気づいたからだろう。フスンと不満そうな溜息をされたけど、こればっかりは僕にどうしようも無いんだよ。精霊を使役する才能が無いようにね。 そのように焚火の煙がゆったりと立ち上るなか、バターをたくさん塗った素朴な美味しさを味わった。 途中で何体かリザードマンが合流して、芋が足りなくなってしまったのは僕らだけの秘密だ。