「おおーーっ、趣のある商店街じゃなあ! くうー、腹の減る匂いが……うむ、うむ、良いところへ案内したではないか!」 よほど気に入ったのか、べたりと珍しくウリドラから抱きつかれてしまった。けれど、胸が当たってますので離れてくれると助かります。「わ、わ、甘じょっぱい香り! んー、口のなかに唾が溜まるっ」「やあ、おせんべいの良い香りだね。僕も初めて来たけれど、あちこち食べ物屋さんがあって賑やかだなぁ。ちょうどいいからお昼はここで済まそうか」 ちらりと時計を見れば、もうお昼時を少し過ぎている。のんびり観光をしているうち時間を忘れていたらしい。もちろん皆は反対するはずもなく……というよりも、とっくに匂いにやられているので食べる気満々の顔を向けられた。「さあ、どこが良いか皆で選んでくれるかな?」 そう言うと、そろって「おーー!」と元気良くこぶしを持ち上げてくれた。 うーん、こう見ると明るくて元気な2人だなぁ。 そういうわけで、きょろきょろと古風なお店を眺めつつ、参拝者のあいだをゆっくり歩く。 しかし魅力的な店はあちこちにあり、くず餅やお団子、洋風のどら焼きなどなど、和菓子の味を知ったばかりの彼女らを誘惑してしまう。 ぐいとマリーから腕を引かれたのは、そんな老舗のお団子屋さんだった。 お団子を焼く専用の鉄板からは、もち米の焼ける良い香りが漂ってくるものだからエルフさんはイチコロのようだ。 待ち構えていた皺だらけのおじいさんは、にかりと笑いかけて来た。「おっ、どうだいお兄さん、そこのさ、台のとこで可愛い外人さんと食べてったら?」