安易にそういうことしたくない、という気持ちはあるけど、でもそういうことしないと心もいつしか離れて、佳世みたいに浮気されちゃったりする可能性が高くなっていく、かもしれない。 もちろん信じてるけど、琴音ちゃんにまで浮気されたら、俺はもうリスカじゃすまない自信はあるぞ。 ま、コドモはできないからちゅーくらいはいいとしてもだ。 佳世の時もそこまではイケたのに、一歩踏み出せず、結局佳世がイケタニにイカされて、ついでに俺が絶望で逝かされて。 男女って、親密になっていけばいくほど、葛藤は出てくるのかも。 ……いやいや! またブレるのイクナイ。俺は清く正しく生きるんだ。そして薔薇のように美しく散る! 百合は知らん。どっかの草むらに咲いているかもしれない。 この前無意識に反応してしまったのはノーカンで夜露死苦よろしく。あの状況で反応しないのはEDか結婚詐欺師くらいなものだろ。「……なんで親指で首を掻っ切るしぐさをしてるんですか、祐介くん?」「心の叫びだ」「はい……?」「まあそんなことは取るに足らない。というより、もし呼び出しを食らったらどうするかを考えなきゃならないね」「あ、は、はい。やましいことはないですから、ちゃんと経緯を説明すれば大丈夫だと思いますが」「琴音ちゃん、それは考えが甘すぎる。きのこ派の敵意を軽んじるたけのこ派の考えくらい甘い」 もめ事が起きた場所が場所ラブホなだけに、何もないと認めてもらうのは悪魔の証明みたいなもんだし。 きのこ派としては、常に危機感を持って対処しないとダメよね。「……」 ん? 琴音ちゃんの反応が何かおかしい。 さっきまでラリってとろけるような表情だったのに、今は口元が険しく引き締まり、背景に『ゴゴゴゴゴ』というオノマトペが見えている。「……祐介くん」「ど、どうかしたの?」「祐介くんは、きのこ派なんですか?」「……へっ?」 俺は斜め上にそれた質問に、間抜けな声をあげてしまったが。「俺は向こう十年、きのこ派だよ。やっぱりあのクラッカーの食感がいい」「クッキーとチョコのハーモニーこそ至高です!」 えっ。 琴音ちゃんはたけのこ派かよ、よりによって。 去年の総選挙、僅差で敗れた屈辱はまだ忘れてないぞ。