「例え父でも……アリス達は縛れない……。それに……護衛はいる……」 そう言って、アリスさんは少し離れた人混みの方を見る。 すると、俺より若干じゃっかん年上に見える、胸が大きくて優しそうな女性が俺に向けて会釈えしゃくをした。 ……え? あの人が護衛? とてもアリスさんを護れる様には見えないんだが……? 俺はそう思ってアリスさんの方を見る。「人を……見かけで判断すれば……後悔する……。さっきだって……カイが良からぬことを考えて……近づいて来ていたら……多分、気絶させられてた……」 俺の視線の意味を読み取ったアリスさんは、そう言って笑った。 まじかよ……。 あの人はあんなに優しそうな見た目をしていて、強いのか……。 てか、気絶って……漫画の世界かよ……。 俺はついそう思ってしまう。 いや、だって普通に考えてありえないだろ……。 なんであんな華奢きゃしゃな女性が強いんだよ……。 色々と納得がいかないぞ……。 俺はそう思いながらも、また別の事が気になっていた。 アリスさんは、俺が聞きたかった事を視線や少し前にした質問から読み取って、的確に答えてきている。 こんな人間俺は見た事が無い。「――お姉ちゃん、お待たせ!」 俺がアリスさんの事を見ていると、金髪ツインテールの女の子が駆け寄ってきた。 平等院アリアか……。 俺が平等院――紛らわしいからアリアさんでいいか。 アリアさんの方を見ると、アリアさんは怪訝な表情で俺の方を見てきた。「誰、こいつ?」 アリアさんは、俺の横に立つアリスさんにそう尋ねた。 お嬢様なのに、やっぱり口が悪いよな。 まぁ、アリスさんも――それに西条もお嬢様口調じゃないけど……。「友達……」 アリスさんはまだ少ししか話した事が無い俺の事を、友達と言ってくれた。 俺はそれに内心喜んだ。 友達がかなり少ない俺にとって、その言葉は嬉しいんだよ……。「へぇ、こいつが……」 アリアさんはアリスさんの言葉を聞いて、俺の事を観察するように見てきた。 嫌だな……。 見られるのが嫌いな俺は、思わずしかめ面をしてしまう。「カイ……連絡先、交換しよ……」 俺がアリアさんの方に意識を向けていると、俺の服の袖をクイクイっと引っ張って、アリスさんがそんな事を言ってきた。 その行動に、アリアさんが目を見開いて驚いている。 アリスさんが連絡先の交換を申し込むのが、それほど珍しいのだろうか……? まぁ、口数が少ないし、友達とあまり交流を深めるタイプには見えないよな。 俺はアリアさんが驚いている理由をそう結論付けると、スマホを取り出しアリスさんのスマホを受け取って、連絡先を交換した。 アリアさんは黙ってそのやり取りを見続けている。「はい、これで完了です」 俺はメッセージや電話がきちんとアリスさんに繋がる事を確認すると、そう言ってスマホをアリスさんに返した。「ありがとう……」 アリスさんは俺からスマホを受け取ると、ニコっと笑った。