とある小さな修道院。日々聖職者が修練に励み、神に祈りをささげる神聖な場所……なのだが。「どうだトンヌラ? そっちにはありそうか?」「兄貴ぃ、全然無さそうっすねぇ……」 俺達が今やってるのは神への冒涜、端的に言えば盗賊行為だ。修道院に忍び込むことに成功した俺、トンヌラはいつもバディを組む兄貴――といっても本当の兄ではなく親しみを込めてそう呼んでいるだけだが――とガサ入れに精を出す。 今日の目的は院内にある……と噂の金のロザリオ。ここの聖職者が身に付けるソレは全て銀色だが、一つだけ黄金に輝く代物が存在し、修道院のシスター長が代々大切に保管している“らしい”……そんな情報屋からのタレこみを頼りに院内の、中でもシスター長の部屋と思われる場所を物色中なわけだ。「兄貴ぃ、ほんとにシスター長が保管してるんですかね? そもそも金のロザリオって実在するんですかぁ?」「何を言ってんだ! 高い金払って仕入れた情報だぞ? ぜってぇあるはずだ!」 血眼になりながらタンスを乱雑に漁る兄貴。面倒見が良くて大らかなおっさんで……何より十数年前に俺がまだ十歳で身よりも無く路頭を彷徨っていた所を助けてくれた命の恩人なのだが、どうにも少し馬鹿なのが玉に瑕だ。「はぁ、疲れちまったなぁ……おっ、あれは――」