「私もやってみたい!」「おお、良いぞ。簡単だからな」 一枚やらせてみたが問題なく出来たので、連続で刷らせてみる。彼女も楽しそうだ。「凄い! 何枚も同じのが出来るね!」「12枚ずつだぞ。終わったら次の絵に交換な」「うん!」 アネモネが凄く楽しそうなので、今日のお勉強は休みにして、本を全部刷ってしまう。 とりあえず12部作るが、原版があれば摩耗するまで刷る事が出来る。 枚数が多くなると徐々に印刷が潰れてきてしまうので、そうなったら原版の寿命だ。 本当はパソコンでも購入してIllu○tratorとかでページを組み、この世界のフォントを作ってプリンターで出力した方が綺麗なのだが。 まぁ、それは野暮ってもんだろう。この手作り感が良いのだ。 もっと印刷のクオリティを上げて確実に枚数を増やしたければ、銅版画にすれば良いしな。 銅版画も高校の美術部で経験済みなので問題ない。 シャングリ・ラで銅版画を検索してみると、ミニプレス機がセットになっているキットが10万円で売っている。 マジで何でも売ってるな――全く感心するわ。思わず笑ってしまう。「何をニヤニヤしてるにゃ? どこかの女の事でも考えてるにゃ?」「いや、何でもない。女なんていないし――よし、今日は遅いのでもう寝よう。明日はこれを本にするぞ」「まだ眠たくない」 ――とか言いつつ、アネモネの目は閉じそうだ。そりゃいつも寝ている時間を大幅に過ぎているからな。「ダメダメ、明日な。それに汚れてしまったから川で手を洗ってこないと」「うん……」 印刷に夢中になってたせいか、アネモネはインクだらけだ。これは石鹸で落ちるかな? LEDランタンを持って暗い外に出る。頭上は満天の星だ。 森の中では木が邪魔で真上しか星空を見ることが出来なかったが、ここでは360度見渡せる。 滝のある崖のところが唯一影になっているが、ほぼ全周が星空だ。 ここで天体観測も良さそうだなぁ。だが知らない星座ばかりだ。やはり、ここは地球ではないらしい。 改めて現実を見せられて軽くショックだが、今更悩んでも仕方ない。住めば都で、ここではここに合った生活を送れるだろう。 何と言っても、シャングリ・ラというチートがあるじゃないか。 まるで夢みたいだが、ところがどっこい夢じゃありません。コレが現実。