「あの、金具もございますが……」「いや、金具は手持ちがあるからな」「承知いたしました」 金物は、シャングリ・ラで買ったほうが安いし、クオリティが高い。家に帰ったら首輪を作ってやろうと思う。 さて、買うものは全て買ったし、家に帰る事にするか~! ――といっても、家自体はアイテムBOXの中に入っているんだけどな。 皆で、車に乗り込み、アストランティアの街を後にする。 日が傾く頃――街道を走り川を渡り、家のあった場所へ帰ってきた。 夕日に染まりつつある鏡のような水面――やっぱり、ここの景色は美しい。「やっと帰って来た~!」 アネモネの言葉と同時に、ベルが窓から飛び出した。早速、パトロールだろう。 車をアイテムBOXへ収納すると、家を元あった場所に召喚した。 だが、位置合わせが中々難しい。全く同じ場所でなくても構わないのだが、やはり気になる。 何回か繰り返し、妥協点を見つけた。「ケンイチ! あの女のベッドを片付けて!」 あの女ってのは子爵夫人の事だ。アネモネは夫人の事が嫌いらしい。「そんなに嫌わなくてもいいじゃないか。友達もいなくて可哀想な人だろ?」「友達なら私だっていなかったし!」「君は弟妹がいたじゃないか。あの人は一人っ子らしいし」 そういえば、貴族で一人っ子は珍しくないか? 普通は子供が多い印象があるが……。「そうですねぇ、普通はやっぱり子供が多いでしょうか……」 プリムラの話でも普通は5~6人は子供がいるようだ。 だが、アネモネの言うとおり、夫人が寝ていたベッドは必要ない。片付ける事にする。 後のツリーハウスや、崖に登るための足場等は明日で良いだろう。 もう暗くなりそうだ、飯を食おう。「何を食う?」「カレー!」「にゃー!」「またかよ。いいけどさ」 時間がないので、レトルトにする。 だが、一手間加える事によって、レトルトもそれなりに美味くなる。 アイテムBOXに入っていた鳥肉を大鍋に取り出して野菜と一緒に炒める。鳥肉は獣人達が採ってきてくれた物だ。 そして炒めながらアネモネの魔法を併用する。「む~、温め!」 これで簡単に火が通る。そして出汁の素を少々。 そしてレトルトカレーを鍋にあけて再び魔法で加熱すれば完成だ。 正確には、肉野菜炒めぶっかけカレーだけどな。これでも、レトルトカレー単体よりは数段美味くなる。