息を潜めてカテリーナ嬢を見ているみんなに私はそう声をかけるとゆっくりと立ち上がる。 そしてビクビクした様子で、図書館に向かって歩いていくカテリーナ嬢の後ろから声をかけた。「カテリーナ様、こんな夜更けに如何されたんですか?」 私に声をかけられてカテリーナ嬢が、目にみえて焦った様子をでこちらを振り返る。 顔はフードの陰に隠れているけれど、カテリーナ嬢が驚いている顔をしているんだろうなとなんとなくわかった。「な! だれ!?」 と怯えたような声を出すカテリーナ嬢の前に、私とシャルちゃんが立ちふさがると、カテリーナ嬢が息を飲む音がした。「な、なんで皆さんがここに……!?」 そう声をあげるカテリーナ嬢と同時に、一歩後ろにいたリッツ君がマッチをすってランプに火を灯してくれた。 怯えたような顔でこちらを見るカテリーナ嬢の顔があらわになる。「カテリーナ様、こんな夜更けに何処へ行って、何をしようとしているんですか?」 改めてそう尋ねると、カテリーナ嬢が、わかりやすく動揺したように肩を揺らした。「べ、べ、べ、別に、何かをしようだなんて……」 となんだかもごもご言っているけれども、カテリーナ嬢のあせり具合が全てを物語っておりますよ。「カテリーナ様、救世の魔典を取りに行く、つもりなのですか?」 シャルちゃんが心配そうな声でそういうと、さらにカテリーナ嬢が一歩後ろに下がった。「な、なんで、ど、どうして、それを!?」 なんとなく見ればわかるよ。 暴走カテリーナ対策本部をなめてもらっちゃこまる! カテリーナ嬢が執拗に救世の魔典通いしてるし、それにサロメ嬢からきいたグエンナーシスの情勢を思えば、そういうことをするかもしれないというのは想定できる。 まあ、杞憂ならいいなと思っていた部分はあったけど……。 だって、救世の魔典を奪うだなんて大それたこと、カテリーナ嬢が実際に行動をするとは思えなくて……。「サロメさんから色々とグエンナーシスのご事情は伺ってます」 私がそういうとカテリーナ嬢が放心したように「サロメが……」とつぶやいた。「サロメさん、本当にカテリーナ様のことを心配してましたよ。ちなみに、救世の魔典を狙ったのは、グエンナーシス卿からの命令ですか?」 私がそう尋ねると、ちょっと放心状態のようなカテリーナ嬢だったけど、ハッとしたように視線を私に移して首を横に振った。「違うわ……お父様がおっしゃったことではないの。これは私が決めた。グエンナーシスにとって、民にとって一番の最善を考えて……私一人で、決めた……」 カテリーナ嬢が、一人で決めた? 少しばかり読みが外れて、私は眉を寄せた。