商業都市アインズヘイル ヤーシスと商談ヤーシス奴隷商館の前に着くと以前会った、あの、なんだっけ。安男? まあいいか。安男が店の前の掃除をしているところだった。俺に気がつくとなにやら顔をしかめて不機嫌そうな顔をしていた。「なんのようだ。もう今日は終わりだよ」態度まで以前とは違う。自分の客でないなら横柄な態度なのか。それじゃあ客はつかねえぞ。接客は笑顔と態度と言葉遣い、後は清潔感だゾ。「ヤーシスに個人的に会いに来たんだがいるか?」「……中に入れ。おい猫。ヤーシス様を呼んできな」「猫じゃない。あと私の仕事は主の護衛。呼ぶならお前が呼んでこい」「んだとこら! 奴隷のくせに俺に口答えか!」「あー……いいよ。とりあえず中に入るから。そしたら誰か来るだろ」「っち……。奥の部屋に入って待ってろ」そういうと安男は先に中に入り、続いて俺達も店の中に入る。猫耳少女は俺の手を引くと以前通された部屋に入っていく。前座った席に座らされると膝の上に猫耳少女が頭を乗せてきた。どうやら撫でろと目で訴えているようだ。仕方ないなと頭や耳をころころと撫でていると、更に奥の部屋の扉が開いた。「これはこれは。仲睦まじいようですねお客様。それで夜分にいかがいたしました?」「ああ、さっきこの子に助けられてな。そのお礼を言いに来たんだ。もしかして寝てたか?」「いえいえ。閉店してもやることは多いですからね。私の就寝はまだまだ先でございますよ」「そうか。仕事の途中に悪かったな」「いえいえ御気になさらないでください。それよりお役に立ったようでございますね」「ああ。助かったよ」「それはようございました……それで、」チラリと猫耳少女を見るヤーシス。「その子もお買い求めいただけるのでしょうか?」「あー……まあその話は後で。二人で話しをしたいんだが……」「……邪魔?」「邪魔ではないが……。まあいいか」「よろしいので?」「まあ秘密だぞ? シーだ。守れるか?」「ん。守る。大丈夫」「よしよし。いい子だなー」ぐしぐしと頭のつぼを掻いてあげる。すると気持ち良さそうに目を細めていた。「……驚きましたね。こうも懐きますか」「ん? こいつ人懐っこいぞ。なー?」「んー。主は主だから。それに気持ちいい」顎を撫でれば顔を上げ、頭を撫でれば頭を下げ、尻尾の根元は最高だといわんばかりにお尻を高く上げていく。「なるほど……。いやはや流石はお客様でございます。それで、本題はどういったものでしょうか?」にこりと笑う瞳の奥に光る商人としての顔。勝負中のこのタイミングで訪ねてきたんだからヤーシスなら気がつくだろう。「まあ察しの通り商売だよ」「ほう。錬金術師の貴方が奴隷商人の私に商売のお話ですか。それはそれは。一体どういったものなのでしょう」「んーまあまだ試作品だけどな」言葉遣いは変わらないが、様が抜けたって事はこっからはお客様扱いはないと見たほうがいいな。そう考え俺は魔法空間からバイブレータ(小)を取り出した。「こちらは……?」