それを眩しげに見る徹さんは、しみじみと漏らした。「私にも分かるよ。あれだけ可愛い子たちがいたら、あちこち車で連れて行きたくなる」「ですよね。だから節約してでも車は残そうと思いまして」 それが良いよと助言をされ、僕は半妖精エルフを出迎えるべく助手席を開く。とんとブーツを鳴らした少女は、花の刺繍入りカーディガンから落ち着いた色のスカートを覗かせていた。 エルフとしての神秘性を見せつけられ、僕のみならず徹さんまで頭をクラリとさせてしまう。「おまたせ、一廣さん。お早うございます、徹さん」 綺麗な声で挨拶をされ、やっぱりこの破壊力は凄いねと彼から視線を向けられた。 まあ、この少女にとっては一介の社会人なんてイチコロですよ。きっとマリーもそれを分かっており、宝石のような愛くるしい瞳でじっと見つめてくるのだ。 いやぁー、羨ましい。車があって羨ましい。そう言いたげに徹さんはかぶりを振るけれど、この車は譲りませんからね。 男同士となると、無言でもそんな会話を出来るものだ。「ほら、はやく行きましょう。今日は調べることが沢山あるのよ」 じれたようエルフから腕を掴まれたので、助手席へ案内をすることにした。華奢な指先をつまみ、静かに腰を下ろしてもらう。 彼女の「調べる」という言葉の通り、今日は大学付属の図書館を目的地にしている。それと宿の世話になったウリドラにはラーメンを約束しているので、自然と彼女も上機嫌の様子だ。