「君がルビーフォルン商会の、リョウ=ルビーフォルン殿だろうか?」 低音の渋みのある声に呼ばれてそちらに目を向けると、長い黒髪を後ろに縛った長身の男の人がいた。 お城の案内人かと思ったけれど、使用人にしては格好がきちんとし過ぎている。 きている服の仕立ても良くて高級そうだ。 これはただの案内人じゃない雰囲気。 というか、なんだか、クロードさんに似ている。髪の長いクロードさんだ。 そんなに髪の毛伸ばして……イメチェンですか? いや、そんなことないよね、あそこまでいきなり伸びるわけないし……かつら? どなただろうと思って、ちょっと惑いながらも、もしかしたら、本日お会いする予定のお城のお偉いさんの可能性もあるので、姿勢を正した。 そして内心の動揺を隠しながら、「はい、リョウ=ルビーフォルンと申します」って答えると、声をかけてきた相手が微笑んだ。