アズリー」「はい?」「内緒だ」「……俺が納得出来なくてもですか?」「あぁ、そういう約束だ」「っ!」 約束? という事は、あの戦場には他に誰かいたという事なのか? あのガストンの使い魔、コノハ程の人格者ならば、その約束を違える訳にはいかないという事か。 それはおそらく、リナたちがビリーに襲われた時、助けた人物との約束。 …………命の恩人との約束。なら、守らない訳にはいかないか。「はぁ~、わかりました。これ以上の詮索はしません」 俺は大きな溜め息を吐きながら、コノハの前で折れて見せた。 そう言った俺に満足気な様子のコノハは、定位置であるはずのバラードの頭から跳び、俺の肩に着地した。「な、なんです?」「おい、リナとは一体どこまで進んだんだ?」 小声で何を言ってるんだ、この鼠は?「いや、進むも何も……――」「――かぁ~、ここまで朴念仁だとリナもそりゃ苦労するか」 おっさんの如く溜め息を吐いたコノハは、自分の額を叩きながら嘆いた。「あの、何が言いたいんです?」 俺はコノハに合わせるように、リナに背を向けて小声で言った。「……信頼と好意の違いくらいはわかっているんだろう?」 …………思い出すな。 以前、ツァルにも似たような事を言われた。「今あの小さな肩に、責任以上のモノを乗せてやるな。そう言いたいだけだよ、私は」「……どうしろっていうんですか。俺に出来る事は――」「――私も男だからな。わかるさ。悠久を生きる者と百年も生きられない娘たちの間に出来たモノだ。その間を隔てるモノは大きく広いんだろうよ。しかし、向こう側は気にしてないんだからな」 じとっとした強い目をコノハが向けてくる。 以前、ライアンに言われそうになった言葉がある。『「後悔をされた事はございますか?」』。それが俺以上にリナを苦しめているのかもしれないと思っていた。 しかし、コノハは言った。「向こう側は気にしてない」と。 これに答えを出せる気がしないのは、今が大変な時だからか、それとも俺の性格故か。 わからない……本当にわからないんだが…………、「あれ? 今、娘たちって言いました?」