「嘘つきは泥棒の始まりだから、駄目なんだよ?」「は、はい……」 俺が素直に返事をすると、桜ちゃんはニコッと笑ってくれた。 どうやら許してくれたようだ。 しかし、今度は警戒した様にアリスさんの顔をジーっと見つめ始める。 ……そう言えば、この子って極度の人見知りだっけ……? 俺は桜ちゃんの小動物が警戒している様な姿から、彼女が学校では他の生徒達から逃げ回っている事を思い出す。 最近ではいつも昼を共にしているからか、雲母には懐く様になったみたいだが……。 だけど、桜ちゃんの警戒態勢はすぐに終わった。「初めまして、お兄ちゃんの妹の桜です」 桜ちゃんはアリスさんに笑顔で礼儀正しく挨拶すると、ピョコっと頭を下げた。 ……あれ? すぐ笑顔に戻ったな……? まぁ、アリスさんは見た目気怠い雰囲気は出しているが、優しそうに見えなくもないしな。 ……いつも無表情だけど……。 そんな一連の桜ちゃんを見て、アリスさんは面白そうな表情で笑う。「へぇ――良い目を持ってるね……。平等院アリス……お兄さんとは……友達……? まぁ……よろしく……」 アリスさんも桜ちゃんと同じように、頭を下げた。 良い目ってどういう事だ……? ――あぁ、桜ちゃんの目は凄く可愛らしいし、そういう意味か……。 というか、何故友達の部分が疑問風だったのかを問いただしたい。 俺達はまだ、友達という関係ではなかったのだろうか……? 俺がそんな事を思ってアリスさんを見ると、アリスさんは桜ちゃんの頭を撫でて、桜ちゃんの耳元まで顔を近づけた。「この社会は……汚い人間ばかりで……大変だよね……?」 アリスさんが何を耳打ちしたのか俺には聞こえなかったが、桜ちゃんが驚いた表情でアリスさんを見ていた。 一体何を言ったんだ……? もしかして、俺の悪口でも桜ちゃんに吹き込んだんじゃないだろうな……? 俺はアリスさんに色々と痛い過去を知られている為、アリスさんが変な事を桜ちゃんに教えていないか不安になった。 だが――次の桜ちゃんの一言で、アリスさんが耳打ちした事は、俺と関係が無い事だという事がわかった。「もしかして――お姉さんもなんですか……?」 桜ちゃんがアリスさんにそう尋ねると、アリスさんはニコッと笑っただけで何も答えない。 ……何が一緒なんだ……?「カイ……部屋に入れて……」 アリスさん達の話す内容が理解できなかった俺が二人を観察していると、アリスさんが俺の部屋に行こうと言い出した。 わざわざ俺の部屋に行くのは、桜ちゃんに聞かせられない内容だからだ。